"Burn After Reading"


"Burn After Reading" 写真クレジット:Focus Features

今年"No Country for Old Men" でアカデミー賞の最優秀作品賞や監督賞など4賞を受賞したジョエル、イーサン・コーエン兄弟監督の最新作。先週末に公開されて興業成績のトップを飾った。
ブラッド・ピットジョージ・クルーニーなどのスターパワーに加えて、コーエンらが得意とする迷走するダーク・コメディの成功作。ヒットの理由も合点がいく。

アル中でCIAを追われたアナリスト、オズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)が、回顧録を書き始めた。その下書きが記録されたCDをヘルス・ジムの軽薄なトレーナー、チャッド(ピット)が発見。国家機密を手に入れたと小躍りし、美容整形の資金が欲しい同僚のリンダ(フランシス・マクドーマンド)と組んでオズボーンから金をせしめようとする。ところが相手は元CIA、手強くて逆襲される。

この恐喝未遂に、オズボーンの妻(ティルダ・スウィントン)や彼女と浮気中の女たらしのハリー(クルーニー)、はてはCIAまで絡んであちこちに飛び火。CD問題はどこへやら、銃やら斧まで登場して収拾がつかなくなっていく。

人が殺されているのに何がおかしい?と突っ込まれると返事に窮してしまうのだが、それがコーエン・コメディの特徴。怖いのに滑稽という特異な映画世界で、"No Country...." (http://d.hatena.ne.jp/doiyumifilm/20071122) では怖さに、この作品では滑稽さに比重が置かれているが、一貫として欲とエゴにまみれた人間の愚かしさを乾いたタッチで描き続けている。(http://d.hatena.ne.jp/doiyumifilm/20061130

今作ではCIAが俎上に載せられ、ポリティカルな風刺劇の趣き。いたずらに諜報しては意味もなく処理をする様子が愚かしい。

ピットのおバカ顔、クルーニーのマヌケ顔、マルコヴィッチのキレまくり顔、マクドーマンドのトボケ顔など、人気俳優たちの濃い演技も大きな見どころ。彼らが喜々として快/怪演している楽しさが画面から伝わる。何度観ても楽しめるコメディのクラシックになるのではないだろうか。

上映時間:91分。ベイエリアの主要シアターで上映中。

"Burn After Reading" 英語公式サイト:http://www.burnafterreading.com--live.com/#/home