"Inferno"(邦題『インフェルノ』)


インフェルノ』写真クレジット:Columbia Pictures
頭部を銃で撃たれ、フィレンツェの病院で目を覚ました宗教象徴学者ラングドン教授(トム・
ハンクス) は、数日間の記憶を喪失。そんな彼を狙う殺し屋が病院に現れ、医師シエナブルックスフェリシティ・ジョーンズ) は、彼を連れ出し彼女の部屋にかくまう。
そこでラングドンは小型プロジェクターを持っていることに気付き、映像を見るとダンテの『神曲』を題材とした『地獄篇(インフェルノ)』 の見取り図だった。しかも、その絵には新たな書き込み文字があり、ラングドンはその謎を解くために何者かにプロジェクターを渡されたことを思い出す。
 
ダン・ブラウン原作の推理小説ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続く3作目の映画化だ。原作の世界的大ヒットにあやかり、前2作も興行的にヒットはしたが、映画としては原作の絵解き以上ではなく、3作共に上出来とはいえない。監督は3作通じて『アポロ13』などヒット作の多いロン・ハワードだ。

ダ・ヴィンチ・・』を読んだが、カトリックの建築や文書、秘密の儀式、象徴の読み解きが次々と登場して、浅薄な筆者は何度も読み返した記憶がある。カトリックへのある程度の教養を前提とした上での複雑な謎解きが原作を読む醍醐味だと思ったが、それを2時間程度の映画として反映させるのは、ハワードようなベテランを持ってしても至難の技、ということなのかもしれない。

本作では生物学者で大富豪のゾブリスト(ベン・フォスター) が企んだ「地獄」を阻止するというシンプルなプロットで、謎解きもさほど多くない。ラングドンを追う「コンソーシアム」という企業や政府のために偽装工作や暗殺をする私設CIAのような組織が登場したのが興味深く、WHOやゾブリストの一味など3者入り乱れて物語が展開していくが、明快さに欠け分かりづらかった。

謎解きの過程では、フィレンツェの名所であるベッキオ宮殿やベッキオ橋、ピッティ宮殿などをふんだんに見せ、最後の舞台となるイスタンブール地下宮殿もゴージャス、というご当地映画風で、これでは観光促進映画ではないか、と疑惑を持ってしまった。

見どころはラングドンの訳ありの恋人役を演じた48 歳のデンマーク女優シセ・バベット・クヌッセン。50 代の男性主人公の恋人役に20 代の女優を配するハリウッド映画が多い中で、特筆したい配役。本作では目尻のシワを隠さず、大人の女の強さと美しさを見せていた。

上映時間: 2時間1分
"Inferno" 英語公式サイト:http://sites.sonypictures.net/inferno/site/
インフェルノ』日本語公式サイト:http://bd-dvd.sonypictures.jp/inferno-movie/#!/