"The Fountain"


写真クレジット:Warner Bros.

初めて『2001年宇宙の旅』を観た時、何がなんだか判らなかったが、すぐにでももう1回観たいという衝動にかられた。謎を解きたい思いもあったが、映画の作り出した謎めいた世界に戻りたかったからだ。それと同じ体験をした。判りやすい映画ではないが、強いエネルギー体に触れているような圧倒的な映像美と想像力をかき立てる物語に惹かれた。

3つの時代が登場する。

16世紀、スペインの大航海時代。女王イザベルの命を受けて、征服者トーマスが不老不死の泉(Fountain of Youth)を求める旅に。マヤ文明の呪術師と出会い、彼を殺して1本の大きな木を見つける。
21世紀、末期ガンの妻イズィーを救おうと、ガン完治薬の研究を重ねる科学者トミー。最愛の妻は"The Fountain"と題する小説を執筆中で、最終章をトミーが終わらせるよう遺言を残して逝く。
そして、26世紀。現実とも夢想とも判別のつかない世界が現れる。飛行士トムは、巨大な老木を乗せた透明なボール状の宇宙船で、死につつある星雲に向かう。その星雲は5世紀前、イズィーとトミーが眺めていたもの。イズィーが飛行士トムの前に何度も現れ、本を終わらせるように告げる…。

時代を行き来しつつ描かれる物語の説明は、抽象絵画の説明と同じであまり意味がない。
イズィー(レイチェル・ワイズ)はイザベル女王の、トム(ヒュー・ジャックマン)は、トーマス、トミーの転生だ。同じ俳優がそれぞれの役を演じることで、1000年にわたって転生をしながら永遠の愛を生きようとした男女が描かれる。16世紀の破壊と殺戮の暗黒時代から21世紀の科学万能時代を経て、26世紀、人類は不老不死に辿りつくのだろうか?

「永遠の愛」という概念を通して、生と死をめぐる人類の長い闘いの歴史を俯瞰しようとしたのだろう。壮大なファンタジーだが、上映時間96分と長くないのも良い。監督は若き奇才ダーレン・アロノフスキー。東洋的死生観を取り込んだ意欲的なオリジナル脚本も彼が書いている。上映中。