"The Road Home"


公開半年を過ぎても上映中という息の長いヒットを続ける"Crouching Tiger, Hidden Dragon"で若い女武者を演じたチャン・ツィイーのデビュー作。

舞台は現代中国の辺境。貧しい山村の分教場で、教師一筋に生きた父の死を知り、帰郷した息子が残された母と再会する。母は、父の遺体を車を使わず、村に入る一本道を担いで連れ帰って欲しいと息子に哀願。吹雪きが荒れ狂う真冬、村びとは無理だと言うのだが、母はガンとして譲らない。なぜなら、その一本道は18才の母が街から派遣された若い教師の父を初めて見た道だった。息子はそこから両親の出会いを回想する。

母の18才当時を演じたのがツィイー。髪を三つ編みし、モンペ に長靴、赤いマフラー姿の彼女がコロコロ走る愛らしさにまず目を奪われ、少女の熱い思いを表情豊かに全身で演じ切ったツィイーの素晴らしさに引き込まれる。といってもアイドル映画ではない。文字も書けない素朴な少女のいじらしい恋を丁寧に描きながら、今だに貧しい中国の教育の現状を衝く骨太な主題。

一途な少女の恋は、忘れかけていた「強く思う」ことの力を思い出させてくれた。試写室では男性も泣いた珠玉の一編。監督は中国第五世代を代表する張芸謀チャン・イーモウ)。代表作は『菊豆』『紅夢』『秋菊の物語』など。