"The Wolf of Wall Street"(邦題『ウルフ・オブ・ウォールストリート』)


ウルフ・オブ・ウォールストリート』写真クレジット:Paramount Pictures
証券会社に就職したジョーダン・ベルフォート(ディカプリオ)は、入社早々、先輩(マシュー・マコノヒー)から、ブローカーは売れば売るだけコミッションが入るオイシイ仕事と教えられ、証券の世界に魅了される。
87年の株大暴落で失職するも、その後、不良株でも売れば50%のコミッションが入る証券を不法な手段で売りさばき、大儲け。さらには学歴のない男たちを集めて自分の会社を作り、巨万の富を手に入れて行く。

だが、私生活は麻薬に手を出しハチャメチャ。彼を支えた妻を捨て、美貌のモデルと再婚。車や豪邸、ヨットと金を湯水のように使い、儲けた金を不法に海外に持ち出すなどして、FBIから目を付けられていく。

株の不法投資等で服役した実在の人物ベルフォートの回顧録ウォール街狂乱日記―「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』(邦題)の映画化である。「ヤバすぎる人生」は大げさな表現ではなくて、金と麻薬とセックスに溺れた男の盛衰をコメディタッチで見せて行く作品だ。

監督は『レイジングブル』や『アビエーター』など実在の男を何度も描いてきたマーティン・スコセッシ、ディカプリオの起用はこれで5作目だ。

ディカプリオはこれまで大作や話題作に多く主演しているにも関わらず演技賞から無縁。本作で始めてゴールデン・グローブの主演男優賞受賞、アカデミー賞の男優賞にもノミネートされた。確かに彼はこれまでのイメージを破る怪熱演をして本作の大きな見所になっている。正直なところ、見所はそれだけだった。

スコセッシ監督は過剰な男を描くと精彩を放つ人で、本作でも金に囚われた男が走り抜けた狂乱の日々を疾走感のある映像で見せてくれている。だが、主人公に魅力を感じられないのだ。

ドキュメタリー映画の傑作『インサイドジョブ』で暴かれたウォール街の実態と証券システムの大欺瞞、それを利用してのし上がった男に共感を持てないのは当然としても、殺人犯ですら描き方一つで人を引きつけるのが映画/物語の世界だ。スコセッシ監督ならもっと面白く見せられた筈という思いが残った。

主人公は口八丁で金を手に入れる術に長けてはいたが、平凡な男であった。彼が巨万を手にして高価なモノや美女、麻薬に溺れるというありがちパターンのつまらなさ。しかも内省ゼロで太々しい。こういう男はどんな風に描いても退屈なものだ。

上映時間:3時間。各地のシネコンで上映中。
"The Wolf of Wall Street" 英語公式サイト:http://www.thewolfofwallstreet.com/
ウルフ・オブ・ウォールストリート』日本語公式サイト:http://www.wolfofwallstreet.jp/