"Ex Machina" (原題『エクス・マキナ』)


写真クレジット:A24、Universal Pictures
インターネットの検索で最大手のブルーブックで働く26才のプログラマー、カレブ(ドーナル・グリーソン)は社内抽選に当たり、創立者ネイサン・ベイトマンオスカー・アイザック) の山奥にあるしゃれた別荘に招待される。
そこで彼はネイサンが開発したヒューマノイド「アバ」(アリシア・ヴィキャンデル)を紹介され、ネイサンからアバがどの程度知的かのチューリングテスト*をするよう指示される。

美しい顔を持つアバは、まるで若い女性のようにカレブと語り、彼はアバに魅了されていく。その様子をモニターするネイサンとアバについて語り合うカレブだが、ネイサンの異様ともいえる人工知能へのアプローチに、なぜ自分この別荘に招待されたのか疑念を抱いていく。

登場人物はこの3人に加えて、ネイサンの世話をするキョウコ(ソノヤ・ミズノ)だけ。雄大な山岳地帯の変化する自然を捉えた美しい映像を挟みながら、密室で繰り広げられる二人の男とヒューマノイドの関係をシャープに描き出したSFスリラーの秀作だ。

脚本/監督はアレックス・ガーランドダニー・ボイル監督の『28日……』などの脚本を担当した人で、長編監督作品は本作が初めて。

題名はラテン語デウス・エクス・マキナが起源で、古代ギリシャの演劇法「機械仕掛けの神」からきている。つまりヒューマノイドのことである。それに聖書のレファレンス、アバ=イブ、作り手ネイサン=ナタン(預言者) という名をつけ、「人間は人間以上のものを作る創造主、神になれるのか?」という問いかけをしている。

カレブは、自らを神と称する傲慢なネイサンに対し、彼が作ろうとしている人工知能が人類を滅亡に導くのではないかと警鐘を鳴らす。

ガーランド監督の「アップルやグーグルが、アバのようなヒューマノイドを作り出すのは10分先のことかも」というコメント通り、アバ登場もそう遠くなさそう。この問いかけは軽いものではない。

とはいえ、筆者は去年の『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(
http://d.hatena.ne.jp/doiyumifilm/20140726) を思い出していた。美しい女の外見を持つ人間以外の何かに、男が魅了されるというコアのアイディアが似ている。大きな違いは『アンダー・ザ……』にはフェミニズムの影響を感じたが、本作ではミソジニー(女嫌い)が感じられたことだった。

ネイサンはアバの前にも何体かの女のヒューマノイドを作っており、それらを裸体のまま虐待する短いシーンが出てくる。彼はキョウコも虐待し、侮蔑していた。

人類を滅亡に導くかもしれない人工知能が女の姿をしている。そのことだけをとっても本作が男の女への不信や嫌悪に根ざしていのではないかという気がした。そんな男が神を標榜することに怖気が走ったが、エンディングでは男の傲慢さの落とし穴を提示して面白い。

チューリングテスト:
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C1%A5%E5%A1%BC%A5%EA%A5%F3%A5%B0%A5%C6%A5%B9%A5%C8

上映時間: 1時間48分。
"Ex Machina" 英語公式サイト:http://exmachina-movie.com/