"Black Mass"(邦題『ブラック・スキャンダル』)


ブラック・スキャンダル』写真クレジット:Warner Bros.
1970年代後半、ボストン南部を仕切るギャング、ジェームズ・バルジャー(ジョニー・デップ)は、同じアイルランド系で幼なじみのFBI捜査官ジョン・コナリー(ジョエル・エドガートン)から、彼の犯罪行為は殺人以外は目をつぶるので、情報提供者にならないかと持ちかけられる。
対立するイタリア系マフィアを排除したかったバルジャーは情報提供者となり、コナリーはマフィアを一掃。ところが敵のいなくなったバルジャーは暴走、殺人を繰り返すが、コナリーとFBIは見て見ぬふりを続けていく。

無茶苦茶な話だが、実話だ。彼の犯罪が仲間の自白で明らかになった後、16年間も逃亡を続けて2011年に逮捕された筋金入りの凶悪犯の話である。

バルジャーの弟ウィリアム(ベネディクト・カンバーバッチ)がマサチューセッツ州下院議員長だったこともあり注目を集め、何度か映画やドラマなり、アイルランド系ギャングの映画『ディパーテッド』のフランク・コステロは彼を下地に、TVドラマ『Brotherhood』はこの対照的な兄弟の関係を描いている。

本作ではコナリーとバルジャーの関係に焦点が当てられ、バルジャーを利用するつもりだったコナリーが、マフィア一掃後の出世を機に、バルジャーの世界に取り込まれ、自滅していく様子が描かれていく。

ボストン南部で育ったアイリッシュのダチ公は絶対裏切らないと信じ続けたコナリー。「家族と友を大切に」はアイルランド系の伝統ではあるが、バルジャーの犯罪者の血が勝っていた。冷血漢というのはこういう男のことを言うのだろう。

本作では一緒に育ったギャング、FBI、政治家が登場し、共にクリスマスを過ごす場面も出てくるが、三者の絡みあう思惑が描かれていないため、ドラマとしてはもの足りなかった。
当然あるはずのバルジャー兄弟の確執も描かれず、演技派カンバーバッチの起用も無駄になった感がある。監督は『クレイジー・ハート』のスコット・クーパー。3時間で仕上げた本作を2時間にカットしたとのことだが、物足りなさはそれに起因するのだろうか。

この役でデップは会心の演技と絶賛を受けているが、同意しかねた。怖い顔はしているが、怖くない。からかって仲間を問い詰めるシーンなど、『グッドフェローズ』のジョー・ペシを真似ているように見えた。世界的な映画スターでファンも多いが、ヘビーなメイクの役が多いのは演技力不足を隠すため?という気がしてならないのだが…。

上映時間:2時間2分。全米のシネコン等で上映中。
"Black Mass" 英語公式サイト:http://www.blackmassthemovie.com/
ブラック・スキャンダル』日本語公式サイト:https://warnerbros.co.jp/c/movies/blackmass/