"The Good Dinosaur”(邦題『アーロと少年』)


"The Good Dinosaur” 写真クレジット:Pixar, Walt Disney Pictures
地球に隕石が落ちてこなったため、恐竜が生存を続けた仮想世界。彼らは言葉を話し、農耕する家族もいた。
3人兄弟の中で一番小さなアーロ(レイモンド・オチョア)は怖がり屋で、鶏に追いかけられる始末で、そんなアーロを心配する母(フランシス・マクドーマンド)と見守る父(ジェフリー・ライト)。ある日アーロは父と山に出かけて嵐になり、父は洪水に飲み込まれ、アーロは見知らぬ土地に流されてしまう。

一人になって何もできないアーロだったが、怖いもの知らずの野生の少年ピックと出会い、彼の助けを得て我が家を目指し、未知の旅を始める。

少年が言葉を話さず、4つ足で敏捷に動き回り、鼻を利かせて怖がりの恐竜の子供を助ける。もし恐竜が絶滅しなかったらという仮定の下に、人間と犬の関係を逆転させ、小さな少年が大きな恐竜を助けると着想がユニークだ。

2015年2本目のピクサーの3Dアニメで、ピクサーらしいクリエイティブな設定だが、前作『インサイド・ヘッド』と比べると、キャラターもストーリーもシンプルでやや面白みに欠けた。

ピクサーアニメは台詞が凝っていて、大人も充分楽しめる作りになっているのが特徴だが、本作の台詞は少なく、むしろ恐竜や少年の自然な動きや表情の変化、アニメでしか表現できないマジカルな映像表現、背景となる自然描写に秀でた作品だった。

柔らかな動きを見せる川面の透明感、襲いかかる濁流、雪を頂く山々の威容と光を受ける木々の瑞々しさ、モンタナの大自然をモデルにした自然映像の素晴らしさは驚異的で、CGでここまで表現できるようになったのかと感服してしまった。この様な優れた技術はアニメだけでなく、あらゆる映像作品の可能性を広げていくに違いない。

監督は本作が長編初のピーター・ソーン。製作途中で監督が変わり、社内のリストラもあって製作がさらに遅れ…という紆余曲折を乗り越えて完成だったようだ。

シンプルな物語ではあったが、ピクサー・スピットは健在。始めは反発していたアーロが次第にピックに心を開き、友情が芽生え、次第にアーロが少年を助けるまでに成長していくという物語に、友情の大切さ、人間性への信頼があり、豊かな感情体験が出来たように思う。こういうアニメこそ、ぜひ子供達に見て欲しい。

上映時間:1時間33分。日本では3月12日に劇場公開予定。

"The Good Dinosaur”英語公式サイト:http://movies.disney.com/the-good-dinosaur
『アーロと少年』日本語公式サイトhttp://www.disney.co.jp/movie/arlo.html