"Kubo And The Two Strings" (原題『クボ・アンド・ザ・トゥー・ストリングス』)


"Kubo And The Two Strings”写真クレジット:Focus Features
小さい頃に片目を失ったクボ(アート・パーキンソン)は、母と二人村はずれの洞窟で暮らしながら、三味線を使って折り紙を舞い踊らせる芸で村人を楽しませていた。そんなクボが、灯篭流しの晩、天から舞い降りてきた母の姉妹(ルーニー・マーラ)から襲われる。
母に助けらたクボが目を覚ますと、傍らにサル(シャーリーズ・セロン)と折り紙の武将がいて、父半蔵が残した甲冑を探すように言われ、クボの冒険の旅が始まる。

古い日本を舞台にしたファンタジー・アニメ。製作は『コララインとボタンの魔女』『パラノーマン ブライス・ホローの謎』などのストップモーション・アニメ(以下SA)の秀作を発表してきたライカ。本作で4作目だ。ライカ作品は、魔女やゾンビなどが登場するちょっとホラー色のあるファンタジーが特徴で、本作でも架空の日本を舞台に、不思議な力を持つ少年の冒険が描かれていく。

まずクボの武器が三味線で、無数の折り紙が彼の意のままに舞いながら敵と闘うという設定がユニークだ。SAで描かれた折り紙が画面いっぱいに動き回る映像がリアルで、美しい。

中盤からサルとカブトムシの武将(マシュー・マコノヒー)が、クボを助ける設定が桃太郎のようだが、後半になると二人の役割が明確となり、桃太郎とは別物と分かる。日本を舞台にしているが、全編を通して物語にオリジナリティがあふれ、先が読めない楽しさがある作品だった。

母の平安時代風着物や、村人の江戸時代風着衣、大正時代に生まれた炭鉱節の盆踊りなど、時代設定が錯綜して「あれ?」という気にさせられたが、さほど気にならなかった。ご愛嬌というより、物語の舞台が時空超えたファンタジー世界であることに加え、灯篭流しや妖怪がしゃどくろなどの伝統的な日本文化を多く取り入れ、それらを凝ったディテールでSAアニメとして再現している作り手の熱意に感心させられたからだと思う。

監督のトラヴィス・ナイトは、黒澤映画に影響を受けない映画人はいない、というような発言をしている。サムライ映画をたくさん見てきた作り手たちの日本映画やアニメへの憧れが本作として結実したのではないだろうか。日本を外から見てきたアニメーターたちによる傑作アニメとしてぜひ推薦したい。

上映時間:1時間41分。
"Kubo And The Two Strings" 英語公式サイト:https://www.kubothemovie.com/