"Art School Confidential"

アートスクールを舞台にしたオフビートな青春コメディ。ちょっとオタクな新入生ジェロームが主人公だ。仲間内だけに通じれば良いという独特な語り口の映画だが、鋭い観察眼が冴え、門外漢でも楽しめる話になっている。

ジェロームは偉大なアーティストを目指して、希望の学校に入学。が、初めてのクラスで、絵が上手いためにクラスメートの反感を買って無視され、ガックリ。それでも、憧れのモデルと親しくなれてハッピー、と思っていたら、子供の絵のような作品で学内のスターとなった男が、彼女に近づいて危険信号。一方、学校周辺では連続殺人が続き、主人公は思わぬ事件に巻き込まれる…。

笑いのポイントは、美術学校に生息する変人奇人の生態だ。意味不明な芸術解説をこねくり回す学生、いつも怒っている少女、毎年専攻を変えるトウの立った万年一年生、美術教師を負け犬呼ばわりする新進アーティストなど、ごう慢で頭でっかち、自己耽溺型のアートする人々がぞくぞくと登場する。

彼らの価うちは「変わっていること」。平凡なジェロームがオタオタするところが、おかしい。ついには自分の作風を捨てて、抽象画やモダンな作風をまねるが、どんどん落ち込んでしまう。画家としての自分の真価を、自分で見つけることの難しさと苦しみが、コメディの中にサラリと描かれて、好感が持てる。ところが、後半の展開では、犯罪も成功の糧にしてしまうアート業界が皮肉たっぷりに描かれ、「成功に必要なのは運、才能と努力はいらない」というメッセージに転じる。エンディングでは、アートへの熱い想いと、成功の愚かしさが混じり合い、笑うに笑えない。まさに風刺画という味わいだった。

原作は、オークランド在住で、シニカルな作風が人気のオルタナティブ・コミック作家ダニエル・クロウズの同名コミック。監督はコミック作家ロバート・クラムドキュメンタリー映画で絶賛されたテリー・ツワイゴフ。二人が組んだのはこれが二回目。ヒットした前作の『ゴースト・ワールド』は、少女の漠然とした不満と孤独を描いた秀作で、この方がクロウズのタッチが伝わる作品ではないかと思う。

主演:マックス・ミンゲラ、ソフィア・マイルス、ジョン・マルコビッチ。上映時間:102分。5月12日より、SFはエンバカデロUAストーンズタウンで上映開始。