”Friends with Money”(邦題『セックス・アンド・マネー』)

才気あふれる女性脚本家の冴えた台詞に、思わず自分自身を見る思い。同居人を責める時の決めつけ口調、女友達に向ける厳しいアドバイス、彼女たちの夫や恋人へ向ける情け容赦ないコメント…。辛辣な物言いは、自信もいら立ちも熟し切った、まさに中年真っ盛りというところだろう。

タイトル通り、三人の女は夫も子供も仕事も金も手に入れた勝ち組。おっとりした大富豪のフラニー、不平不満をタレまくる高級服デザイナーのジェーン、中堅(ちゅうけん)脚本家のクリス。負け組は、独身でハウスクリーニングをしているオリビア一人だ。現実感が薄く、別れた男が忘れられない。この役をジェニファー・アニストンが演じている。A. ジョリーに夫ブラピを取られたことになっている女優だ。こういう立場の女に味方したくなるのは女の常。それを利用してのキャスティングかもしれない。

この映画でも、勝ち組の女たちはオリビアを心配するが、皆高い所から見下ろす態度。金を貸してくれと頼むオリビアに「セラピーに行くお金なら出す」と言うフラニー。彼女の無神経な対応に傷つき、ますます追い込まれるオリビアだ。

勝ち組の女もそれぞれに問題を抱えて、外見ほど「勝っていない」。夫たちも三人三様で、妻たちの不満の対象となっているが、金のある女の順から幸せそうという設定だ。ところが、一番幸せそうなフラニーの夫が、一番不実で嘘つきに見える。気のせいだろうか。

ロサンゼルスのアッパーミドルクラスの暮らし。その宮中を見知った清少納言が書いた小説という感じか。「いとみぐるし、いとおかし」の面白さがあるのだが、見終わると暗い気持ちになっていた。

エンディングで生じたオリビアへの救いが、金と男がらみだったこと。これも一つの現実かもしれないが、金をめぐる女同士の友情を描いた映画でこの終わり方では、元気が出ない。元気を出してもらうつもりで作った映画ではないのだろうが、女友達に推薦する気になれない映画だ。
脚本、監督は"Lovely & Amazing" など、女を主人公にした映画を作り続けているニコール・ホロフセナー 。
上映時間:1時間28分。シネアート@エンパイアとエンバカデロシアターで上映中。
キャプション:左からジェーン(フランシス・マクドーマンド)、オリビア、クリス(キャサリン・キーナー)、フラニー(ジョーン・キューザック)。