"A Prairie Home Companion"

ラジオを聞かなくなって、もうどれ位になるだろう。当地のカーラジオから聞こえてくるラジオ番組はにぎやかで、うるさいものが多いが、この映画に登場するラジオ番組は、のんびりと素朴で、古き良きアメリカをしのばせてくれる。スローなペースで眠くなるのだが、見終わって時間が経ってみると、気持ちのよい夢を見ていた気分。子供の頃に聞いたラジオの民謡番組や、昼休みに隣の工場から聞こえてきたNHK第一の「昼の憩い」など、消えゆくラジオの時代への郷愁をさそってくれる映画だ。

お話は、ミネソタのラジオ局に実在する公開歌番組"A Prairie Home Companion" を舞台にした牧歌(ぼっか)的なコメディ。番組の最終放送の晩に、エンジェルという名の幽霊が現れ、番組を見守り、舞台ではどさ回りが専門になってしまったカントリー歌手たちや華やかに歌う。舞台裏でもささやかなドラマが繰り広げられ、ぐるぐる回る走馬灯を見ているような話だ。夢心地になるのはそのせいかもしれない。監督は、81才現役のロバート・アルトマン。『ザ・プレイヤー』『プレタポルテ』など、華やかな業界の内幕を群像劇として描くことで知られる。豪華なキャストが多く出演することでも有名。

Prairieというのは、ミシシッピ川流域の大草原のこと。ラジオ番組 "A Prairie...." は、この地に住む農業や牧畜に携わる人々に向けて作られたのだろう。30年以上も続いて来た長寿番組で、ファンは全米に広がり、番組を録音したCDもベストセラーらしい。

ギャリソン・キーラーのという歌う司会者が人気者で、彼が脚本を書き、自分自身を演じ、語り部分を歌って聞かせる名人芸を披露している。主演のメリル・ストリープもカントリーを堂々と何曲も歌い、名コメディアンのリリー・トムリンや、若手人気女優のリンジー・ローハンなど、それぞれに見事な歌いっぷりだ。ラジオを聞いて育った人やカントリーファンに、お薦めしたい。
上映時間:1時間45分。6月9日よりベイエリアの主要映画館で上映開始。