Netfilx(www.netflix.com) のメンバーになって、DVDで映画をみる機会が増えた。Netfilxは月々会費を払って、ネット上のDVDリストの中から好きなDVD映画を選んで郵便で送ってもらい、見終わったら添付の封筒にいれてDVDを送り返すという新しい映画レンタル・システムだ。

DVDという軽いメディアが出来たお陰で可能になったシステム。ビデオテープではこれは出来なかっただろう。このシステムの売りは、DVDリストの豊富さ、返還日が無いことと、郵送で返せる簡便さだ。効率よく観ていくと、かなり安くDVDが観られるので、人気が高く利用者が激増している。市中でビデオ・レンタルをしていた会社や、小さな店がボコボコ潰れている。映画館も今年になって、大きなところが二館つぶれた。

これと同じことが音楽にもいえて、iTune などを通して楽曲を買うシステムが生まれて以来、ライブラリーも豊富、試聴も出来る便利さで利用者が増え、市内のミュージックストアがどんどん潰れている。

かつて音楽は、レコード盤という黒い板に刻まれ、デザインを競う四角いカバーに入り売られていた訳だが、それがテープになり、CDになって、ついに音楽が記録される物質まで消えた。iTuneで買った楽曲をiPodに入れるという行為の中には、何も物質が介在しない。楽曲というデジタルな情報が、ハード上を移動するだけだ。

そのうちNetfilxも御用済みとなって、映画も音楽のように、コンピューターにダウンロードをして観るのが当たり前になる日がくるだろう。小さな産業革命だ。それが良いことかどうかは判断は出来ないが、これが一般化すると、人は確実に一人でいる時間が増えることは確かだ。

映画館に行く、レコード屋に行くという、街や人の中に行くという行動が必要なくなり、自分の好きな時に好きな場所で一人で映画や音楽を楽しめる時代だ。最近、試写会に行って困るのは、上映中にケータイの画面を見る観客の多さだ。家で一人で映画を観ているつもりなのだろうか。チカチカしてものすごく目障りだが、減るどころか、こういう観客がどんどん増えている。

「自分の好きな時に好きな場所で」というウリは、一見便利で、ありがたく思える。しかし、この勝手気ままの先には、時間を守れない、人と協調できない人間の群れが見える。しかも、困ったことに、その群れの中に自分の顔も見えるから始末が悪いのだ。せめてのも救いは、ケータイを持っていないことくらいか。