"Amelie"

公開数週間を過ぎても、平日のマチネーがほぼ満席という、静かで熱いヒットを続ける最新フランス映画。今年の春パリで大人気をはくし、現在東京でも上映中。本が出版されるほどの人気を集めている。

パリのモンマルトルの一角に暮らすアメリオドレイ・トトゥ)は、想像力旺盛な内気な娘。ある日、自分のアパートに昔住んでいた少年の宝箱を発見した彼女は、その持ち主を見つけて返してあげようと思い立ち、人を幸せにする喜びを知る。

向かいに住む同じ絵を模写し続ける一人暮しの老人を訪ねたり、彼女が働くカフェにやってくる失恋男に恋の橋渡しをしたり、人のおせっかいを焼くアメリだが、自分の恋にはひっこみ思案。変わり者の青年ニノに一目惚れしたはいいが、じれったいほど恋の遠回りをしてしまう。

アメリが、人を幸せにしようと動き回るパリの街角と小途は、まるでユトリロの絵画から抜け出してきたよう。洒落た広告が素敵なメトロの駅、カフェオレの香りがスクリーンから漂ってきそうなクラシックなカフェや、マイケル・ソワのイラストが掛かったアメリの可愛らしいベッドルームなど、凝った細部がアメリの住むファンタジーの街パリを美しく飾る。撮影監督のブリュノ・デルボネルの夢のような映像が秀逸だ。失望や思い込み、過去へのこだわりを捨てた時、人は幸福になれる、というメッセージをサラリと伝えてくれるフランスらしい粋な作品。監督は『エイリアン4』などのダークな作品が多かったジャンピエール・ジュネ。