Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby


写真クレジット:Columbia Pictures

マイク・マイヤーズの『オースティン・パワーズ』が、イギリス文化のカリカチュアだとすると、この映画はウィル・ファレルによるアメリカ文化のカリカチュアだ。星条旗にワンダーブレッド(アメリカの「ヤマザキ」食パン) 、NASCARhttp://ja.wikipedia.org/wiki/NASCAR)と金髪のトロフィー・ワイフ、ディナーはピザ、外食はアップルビー(アメリカの「すかいらーく」)という、クラクラするような平均的アメリカ文化を信じる平凡な男の盛衰物語。爆笑の連続だった。

脚本も担当したファレルは、マイヤーズと共にTVの深夜コメディ番組サタデー・ナイト・ライブの卒業生。ファレルが出ていた頃は、ブッシュ大統領などのものまねが上手い、芸達者な人だと思ったが、ハリウッドで成功するとは思えなかった。周りに強烈なキャラがそろっていたせいか、極彩色の中の白色、何でも染まる平凡な見かけで、印象が薄かった。

ところが、彼が映画館の大画面に出ると、平凡な男の挙動不審が際立つから、不思議だ。『プロデューサーズ』では正と狂のさかい目スレスレの絶妙な演技で目を引いた。最近は主演コメディ映画のヒットが続き、今や人気ナンバーワンのコメディアンだ。

主人公は、子供の頃からのスピード狂でレーサーになったリッキー。幼なじみのカルを相棒に連勝を続け、おごり切ったリッキーは、ゲイのフランス人レーサーに挑戦を受ける。が、レース中に大事故を起こし、引退。しかも、美人の妻は彼を捨て、カルと再婚。事故のトラウマで再起不能になったリッキーは、息子二人を連れて母の元に帰る。そこに長年消息を断っていた父親が現れ、リッキーに再起を迫る…。

家族、友人、レースクルー、スポンサーと彼の妻、ライバルと彼の「夫」まで、脇役がやたらに多く登場。リッキーの人生に絡んで、話がどんどん展開していくのだが混乱がなく、手際の良い演出だ。たとえると、中心になるリッキーが白いご飯で、味付けの濃いオカズ(脇役)がバランスよく詰め込まれた幕の内弁当風。お下品な味もあるが、飽きさせない。特に濃かったのは、ゲイのレーサー。ウサン臭いフランス訛りを駆使して、しきりにリッキーに接吻を迫るシーンでは、笑い過ぎて鼻水が…。ファレルがブッシュに見えることもあって、彼のフランス人嫌いは特に笑えた。

共同脚本と監督はアダム・マッケイ。他の出演にジョン・C・ライリー、サーシャ・バロン・コーエン。上映時間1時間45分。シネコン等で上映中。