”The Ground Truth”


写真クレジット:Focus Features

一瞬の判断で女性を銃撃した後、彼女が降伏の白い布を持っていたことを知った兵士。イラク戦争から帰還後も、その情景が脳裏から離れない、眠れない。戦争だからと正当化するには、イラク戦争はあまりに偽りに満ちていた…。
そんな解決のつかない思いを抱えた退役兵たちの証言を集めた、パワフルなドキュメンタリー映画だ。

大統領の言葉を素直に信じ、または学費を稼ぐために入隊した若者たちが、「殺せ、殺せ」と叩き込まれた軍事訓練から、子供や女性も犠牲にする目的の見えないイラクでの戦闘の日々、そして帰還後のPTSD心的外傷後ストレス障害)の苦しみや、社会復帰の困難などを、驚くほど率直に語っている。片手、片足を失ったにも関わらず、戦争の大義が嘘だったことへの失望と怒りを初々しい顔に刻んだ若者たち、帰還した息子が自殺した両親。レーダー上に映る人々をゲームのように撃ち殺していく残酷な映像などを交えながら、TV報道では絶対伝わってこないイラク戦争の現状と、兵士とその家族の現実が、鮮烈に伝わる。

監督はこの作品が初監督の、パトリシア・フォークロッド。映画プロデューサーとしても長い経歴を持つ彼女に、電話で制作の経緯を聞いた。
「(退役兵の声が報道されない現状に)怒りがあったので、ともかく彼らの声を記録するために、お金を集めて撮影を始めました。ちょっと撮影しては人に見せてお金を集め、また撮っては人に見せてを繰り返して…」。 2003年から今年の3月まで2以上かけて丹念に退役兵を追った。「編集とか音楽は人を頼んだけど、基本的にはすべて一人」撮影過程を通じて「退役兵コミュニティの一部になっていった」という。カジュアルな語り口が、親しみやすい人。温かな人柄を思わせる。

映画のホームページに行くと退役兵を支援する団体のリストが出ている。映画人というより、アクティビストという感じですねと言うと「映画を作るだけでは充分ではないでしょ? 退役兵には愛が必要。自分たちの声を聞いて欲しいと思っているんです。」と力強い返事が返ってきた。
見終わって「良心の重み」という言葉が浮かぶ。それは観る者の良心でもあるのではないだろうか。
上映時間:1時間20分。サンフランシスコはエンバカデロ・シアターで上映中。DVDは26日から発売される。