アクション・スター、トニー・ジャー


写真クレジット:The Weinstein Company

中国のアクション映画が、つまらなくなって久しい。香港時代のジャッキー・チェン映画はワイヤーや特撮も使わず、中国武術の醍醐味と息もつかせぬアクションの連続で、観客を楽しませてくれたものだ。そんなチェンの映画を観て育ったというジャー。彼の映画にはワイヤーや特撮のトリックは一切ない。主演作はまだ2作だが、アクション映画ファンなら必ずや彼の敏捷な動きに目を見張るだろう。水平横跳び蹴りや垂直な壁を駆け上がる身軽さは、人間技とは思えない。

10才の頃からタイの伝統武術ムエタイを学び、15才でアクション・スターのパンナー・リットグライに師事。体育大学に進学後は、武術以外に体操も学んだ。スタントマンとしても長い経験を持ち、03年に初主演した"Ong-bak" のヒットで世界の注目を浴び、上映中の "The Protector"は彼の主演2作目だ。

まずは、驚異的なアクションの秘密について聞くと「クレージーだから」と英語で答え、タイ語で「強い情熱です。ムエタイの素晴らしさを世界の人たちに知ってもらいたいので、いつも全身全霊をかけて演じています」と熱っぽく語る。映画の撮影のない日でも8時間の訓練は欠かさず「オリンピックの選手と同じ」という。

撮影中の怪我は「筋を痛める程度。怪我人が出ないように何度もリハーサルをし、相方はみな兄弟のようにして育った仲間」と慎重だ。
ブルース・リージェット・リーの大ファンで「リーと共演ができたらうれしい」と期待を。ハリウッド映画への出演予定は「オファーはたくさん来ているが、今は"Ong-bak"の続編を初監督しているので、そのことで頭が一杯。でも、スピルバーグ監督から誘いがあったら出ますよ」と笑った。

小柄で静かな人、笑うと少年のような30才。ハリウッドで脇役や悪役などをやらず、ムエタイ映画の名作を作ってファンを楽しませて欲しいと伝えると、明るい表情でうなづいてくれた。
監督はプラッチャヤー・ピンゲーオ。上映時間:1時間24分。シネコンで上映中。