"Che"


"Che" 写真クレジット:IFC Films
チェ・ゲバラカストロとの出会いから、キューバ革命への参加、ボリビアで志半ばで処刑されるまでを描いた4時間17分の野心的な大作だ。日本とほぼ同時に公開されたが、宣伝方法から観客の反応まで日米でかなりの温度差がある。
日本では主演俳優と監督が大学で講演風の会見をし、興業成績もまずまず。一方、米国では作品の公式サイトもなく、アカデミー賞のノミネーションも一切なかった。米国の覇権主義帝国主義を鋭く批判した人なので、米国で人気がないのは当然かもしれない。

一方、南米各国を旅した人が「どの国でもゲバラのTシャツを着ている若者がいる」と言うほど今でも人気の高いチェ(愛称)。キューバだけでなく南米各地で根強い人気が続く秘密は、南米を一つと捉えて大陸革命を目指したからだろう。キューバ革命後、こつ然と消えてボリビアに行ったのも、地理的にボリビアが大陸の中心に位置していたため。彼の地を基点に傘を広げるように革命戦争を南米全体に拡大しようという壮大な目標があったからだ。

作品はキューバ革命を描いたパート1とボリビアでのゲリラ戦を描いたパート2の二部作。パート1は『モーターサイクル・ダイアリーズ』 を観た人なら、その続きを観ているような錯覚を持つだろう。

"Che" 写真クレジット:IFC Films
喘息持ちの医師である28歳のエルネスト・ゲバラが、軍医の役割を担ってキューバのゲリラ戦に参加した経緯から、ジャングルの中で文盲の農夫や若者たちを教育しつつ、軍事訓練を重ねて着実にゲリラ戦に勝利していく様子が淡々と描かれていく。革命後、国連総会で行った演説も挿入され、彼の思想性も語られる作りで、映画作品としては前半の方が観やすい。

パート2の方は協力を約束したボリビア共産党が支援を断ち切ったために、数少ない戦闘員でゲリラ生活を一年以上も続け、苦戦する姿が描かれる。前半とは明暗を分けた作りだが、全編を通してゲバラを偶像視することなく、地道なゲリラ戦を続けた彼の実像に迫っていく。

派手なアクションや恋愛、ドラマで色付けして、2時間位の英雄ものとして作ればアメリカでもヒットしたかもしれないが、ジャングルで長期のゲリラ戦を闘う実態をじっくり描き、4時間は納得できる長さだった。きちんと描かれるべき内容をもった作品で、安易な感動を寄せ付けないのも良かった。

監督は『オーシャンズ11』シリーズなどメリハリの利いた犯罪映画も作れる実力派のスティーブン・ソダーバーグ。主演のベニチオ・デルトロは、この役で昨年のカンヌで主演男優賞受賞している。

上映時間:パート1ー2時間9分、パート2ー2時間8分。
サンフランシスコはルミエール、イーストベイはシャタック・シネマなどで2作を続けて観らるロードショー上映中。ただし入場料は一作ごと別料金。

"Che"日本語公式サイト:http://che.gyao.jp/