"White Material"(『ホワイト・マテリアル』)


『ホワイト・マテリアル』 写真クレジット:IFC Films
『ショコラ』でアフリカで子供時代を過ごした体験を映像化したフランスの女性映画監督クレール・ドニが、もう一度アフリカを描いた。
今回は権威ある文学賞ゴンクール賞を受賞したアフリカ生まれの作家マリー・ンディアイと共に脚本を書き、フランスで大きな注目を浴びたようだ。アフリカとフランスという植民地主義で繋がった大地と文化、歴史を詩的で異風な物語を通して描き出したドニ監督らしい作品で、彼女は本作をコンゴの劇作家ソニー・ラブ=タンシに捧げている。

内乱が起きたアフリカ某国でコーヒー農園を営むブラン家の物語である。義父から離婚後も農園を任されてるもマリア(イザベル・ユペール)はフランス軍の避難勧告を無視し、すでに労働者が逃げ出した農園に居残っていた。コーヒーの収穫まであと一週間だけ欲しい彼女は、町に人手を駆り出しに出かける。

そんな頃、家に反乱軍の子供が盗みに入り、また政府軍が捜す反乱側のリーダーも彼女の農園に逃げ込んくる。ジリジリと迫る内戦の危機の最中、マリアの息子は反乱軍の子供たちと合流し、元夫は彼女に秘密で農場を売却。町で無差別殺人を目撃したマリアは、息子を探すため危険が待ち受ける農園に向かうのだった。

アフリカにおける所有と非所有の構造が描かれるが、横暴な入植者と無力な現地人という単純な図式ではない。破綻しつつあるブラン家のドラマが点描される一方で、マリアのネックレスを着けて彼女に銃を向ける少女や、反乱軍の少年がマリアの家に忍び込んでソファに座った時の細く幼い足に、無謀な内乱の実態が象徴的に描かれていく。実際、たくさんの子供が殺される。

ブラン家の人々は熱く胎動するアフリカの土地と人々に取り囲まれた白い点だ。危機が迫れば使用人たちは逃げ出し、白い点はさらに小さくなっていく。だが、この点はなかなか消えない。マリアはその消えない白い点なのだ。題名は内乱軍の少年が白人の所有物を称した言葉なのだが、本作を俯瞰すればまさにブラン家そのものがホワイト・マテリアルなのだろう。

とはいえ、いくらマリアが執着しても農園の所有者は義父である。そんな弱い彼女の立場性が予想もしないエンディングに繋がって行く。その衝撃と慧眼、これだからフランスの女性監督の映画から目が離せないのだ。

上映時間:1時間42分。サンフランシスコはルミエール・シアターで上映中。
『ホワイト・マテリアル』英語公式サイト:http://www.ifcfilms.com/uncategorized/white-material