"The Ides Of March"(原題『ジ・アイズ・オブ・マーチ』)


『ジ・アイズ・オブ・マーチ』写真クレジット:Sony Picture Entertainment Inc.
ジョージ・クルーニーが監督した政治サスペンス映画の秀作だ。

大統領選の民主党指名候補を狙うオハイオ州のマイク・モリス知事(クルーニー)には、長年彼を支えてきた広報担当マネージャー、ポール(フィリップ・シーモア・ホフマン)、若き片腕スティーヴン(ライアン・ゴズリング)がいた。
ティーヴンは、モリス知事のアメリカの尊厳の回復、嘘のない政治を訴える政治理念を信じる優秀な広報担当者だったが、ある日対抗候補のマネージャー、トム(ポール・ジアマッティ)から呼び出され、ポールに無断で彼に会ってしまう。同じ頃、ある偶然からモリス知事のスキャンダルを知り、この二つの事件が彼の運命を大きく狂わせていく。

原作は04年に民主党の大統領候補ハワード・ディーンの選挙スタッフだったボー・ウィリモンの書いた戯曲『ファラガット・ノース』(首都ワシントンDC市にある地下鉄の駅名)で、彼と共にクルニーらが脚色して映画化した。ウィリモンはスキャンダル部分は虚構だが、選挙選の裏でうごめくパラノイア、馬鹿げた野望、権力への渇望などのムードはそのまま書いたという。

確かに、スティーヴンがはまった罠には老練なる策士の恐ろしさがあり、政治家は化け物、選挙戦は伏魔殿という思いを強くした。題名はシーザーがブルータスに殺された3月15日にから来ている。

物語は、一つの選挙戦を通して理想を持った若者が生き残りを掛けて闘い、魂を変質させていく姿を描いていく。本作が監督作品5作目のクルーニーの演出も手堅く、二面性のあるモリス知事役も適役だった。

大統領選ともなればもっと多くの参謀やら取り巻きの思惑が動くはずで、本作はやや単純化され過ぎているのが気にはなったが、娯楽映画としてはこれ位スッキリしている方が良いのかもしれない。

選挙戦の内幕や候補者の怪物性を描いた米国映画に『パーフェクト・カップル』『ボブ★ロバーツ』『候補者ビル・マッケイ』などがあるので見比べてみるのも面白いだろう。

上映時間:1時間41分。サンフランシスコでは主要シネコンで上映中。
『ジ・アイズ・オブ・マーチ』英語公式サイト:http://idesofmarch-movie.com/