"Make Banks Pay California"の活動


写真クレジット:SF Examiner
9月29日、サンフランシスコの金融街を歩いていたらデモに出くわした。参加者は7-800人ほどで、平日昼のデモとしてはかなり大きい。金融街でデモなんて珍しいなあと思っていたら、なんと金融機関そのものへのデモだった。若い女の人が「アメリカを癒そう、ウォール街に課税せよ」というプラカードを渡そうとするので、ビラだけもらったら、全米看護師連合のものだった。
「リーマッンショックで引き起こされたアメリカの経済危機は、仕事や健康保険、住宅、教育、退職環境など生活全般を荒廃させている。その原因を作った金融機関の投機に課税をして経済を回復させ、より健康なアメリカを取り戻そう」という看護師連合らしい論調のビラだ。

家に帰って彼女らの活動を調べてみたら、このデモは教師や建設業などの労働組合の他、住宅ローン問題で集まる市民団体、宗教団体などで構成される "Make Banks Pay California" (銀行に責任を取らせろカリフォルニア連合、以下『MBPC』)の活動の一環だった。

さらに、この動きは9月中旬から全米で始まった金融機関に対する抗議運動“Occupy Wall Street”(ウォール街を占拠せよ)に連動していることも分かってきた。ウォール街のあるニューヨークでは大規模な抗議行動が何度もあり、10月1日にはブルックリン橋上で座り込んだ700人以上が拘束された。10月上旬はロサンゼルスでも大きな抗議行動が予定されている。起きるべき運動のうねりが生まれたという感じだ。

以前に映画『インサイド・ジョブ』の紹介をした時にも書いたが、現在の世界的経済危機を生んだウォール街の誰もが訴追を受けていないばかりか、その後政府の公的援助を受け、多大なボーナスを受け取っている。MBPCのレポートによると、09年に総額7000億ドルという莫大な政府の援助を得た主要銀行や証券会社のCEOたちが2010年に受け取ったボーナスの平均は1200万ドル(90億円)。誰だって一体どうなってるの?首を傾げたくなる。

ところが、市民生活は悪化の一途。カリフォルニア州(以下加州)は全米の中でも最も大きな影響を受けた州で、銀行ローンを持っている世帯の1/3は、家の価値より家を買うために借りた借金の方が多いネガティブ・エクイティという状態にいるという。

これに対してオバマ大統領は就任後間もなく、年間のローン支払い総額が税引き前所得の31%内に収まるよう、返済金利の引き下げ、返済期間の延長などを盛り込んだ補助金を出して全米400万世帯の救済を目指したが、たった76万件の利用しかされていない。きっと、利用規約に適合しない人が多いかったのだろう。MBPCによると加州では2012年までに200万世帯が家の差し押さえを受けるだろうと予測している。

Make Banks Pay Californiaのフェースブックの写真より。

こんな状況に対して、家の立ち退きに拒否して自宅前に座り込みをしている一家もいる。また、立ち退きを宣告された市民たちが、ローンを組んだ銀行にプラカードを持ってピケを張ったり、銀行内に入っての抗議というような直接的な行動も起きている。主導しているのは移民などの低所得労働者を中心に組織された "Alliance of Californians for Community Empowerment"(加州州民の地位向上同盟)。「借金が返せなくて家が差し押え」という状況は自己責任に帰されることが普通だが、今や個人の問題を越えているという視点をもって立ち上がったのはともかくも力強いことだし、頼もしい限りだ。

最後に「ウォール街に課税せよ」の内容を簡単に説明しよう。これは09年に上程された"Let Wall Street Pay for the Restoration of Main Street Act " (メインストリート<実体経済>再生の費用をウォール街に支払わせる制定法)という法案の基本内容で、為替取引や株式、有価証券取引に課税することで投機を抑制し、税収を財源として財政赤字の縮小と雇用を作り出そうというものだ。金融取引税と言われるもので、1999年までウォール街で課税されていたが、これが全廃されてウォール街の暴走の一因になったと言われている。

この提案に対して財務長官を始めオバマ政権は足踏み状態。ウォール街にベッタリと言われるオバマ大統領への失望は高まるばかりだ。来年は大統領再選の年だが、08年に彼を熱く応援した人たちの多くはそっぽを向くのではないだろうか。

Make Banks Pay California 英語公式サイト:http://www.makebankspaycalifornia.com/
Occupy Wall Street 英語公式サイト:http://occupywallst.org/