"Young Adult"(邦題『ヤング≒アダルト』)


ヤング≒アダルト』写真クレジット:Paramount Pictures
だらし無い格好でポーズするシャーリーズ・セロンのポスターを観て、あまり観る気が起きなかったのだが、外見に騙されることなかれ。しっかりとした歯ごたえのあるダークコメディの秀作だ。
脚本は07年に大ヒットした『ジュノ』のディアブロ・コーディのオリジナルで、監督も同作で組んだジェイソン・ライトマン、息のあった二人のコラボが本作でも成功している。『ジュノ』の愛らしさはないが、30を過ぎてもティーン時代から抜け出せない大人少女の懲りないしぶとさを描いて面白かった。

ミネアポリスで一人暮らしをするバツイチのメイヴィス(セロン)は、ヤング・アダルト小説のゴーストライター。ややアル中気味で、ある朝二日酔いで目覚めると、昔のボーイフレンド、バディ(パトリック・ウィルソン)から子供の誕生を知らせるメールが届く。生まれ故郷の田舎町で幸せな結婚生活をしているバディだが、メイヴィスはなぜか「彼とヨリを戻せば自分は幸せ」になれると確信し、故郷で一騒動を巻き起こす。

美人で頭も良かったメイヴィスにとって、生まれ故郷は田舎臭くて唾棄すべき土地。大都会に出てライターとなり、早々に結婚をした勝ち組だったはずの彼女だが、その夢も破れた。捨てたはずの故郷にノコノコと出かけて既婚の元カレを取り戻そうというかなり無茶な計画。しかも、彼女は超のつく自己チューで高慢、口は悪いし、決して反省をしない強気の女という設定がおかしい。

コーディの書いたシニカルな台詞も切れ味が良く、従来のハリウッドなら主役を引き立てる敵役が、セロンが演じると実に立体感のある主役として生き始める。メイヴィスの期待と失望、さもしさと孤独など微妙に変化する表情を自在に演じ分け、汚れ役を演じなくても充分巧みな演技者であることを証明している。また、メイヴィスが見下す冴えない元同窓生マット(パットン・オズワルト)の陰影のある人間味や生活感などが丁寧に描かれていることも本作に奥行きを与えている。

振り返るとライトマン監督の『サンキュー・スモーキング』『マイレージ、マイライフ』の主人公らも、独特のへ理屈を生きる奇妙な男たちで、脇役も一筋縄ではいかない人物が多かった。ライトマンの映画世界には彼にしか描けないおかしな人々が生息し、その際立った人間像を描き出す演出力は50年代のビリー・ワイルダーに通じる。つまり、この人のコメディは絶対に面白いという期待が裏切られないのだ。

上映時間:1時間34分。サンフランシスコはシネコン等で上映中。
ヤング≒アダルト』英語公式サイト:http://www.youngadultmovie.com/?gclid=CN2v-8Xkoq0CFScRNAodzlcxlQ
ヤング≒アダルト』日本語公式サイト:http://www.young-adult.jp/