"Into the Woods"(邦題『イントゥ・ザ・ウッズ』)


『イントゥ・ザ・ウッズ』写真クレジット:Walt Disney Studios Motion Pictures
働き者のパン屋の夫婦(ジェームス・コーデン、エミリー・ブラント)に子供がいないのは、隣りに住む魔女(メリル・ストリープ)の呪いのためだった。魔女は呪いを解いて欲しいなら、3日後の青い月の晩までに、森に行って4つのものを手に入れて来いという。
夫婦は魔女の指示通り、白い牛、赤いマント、黄金の靴、黄色い髪を求めて森に入る。そこで白い牛を連れた少年(ダニエル・ハトルストーン)、おばあちゃんに会いにいく赤ずきん(リラ・クロフォード)、王子(クリス・パイン)の舞踏会から帰るシンデレラ(アナ・ケンドリック)、そして高い塔に暮らす金髪の娘ラプンツェル(マッケンジーマウジー)と出会い、魔女の指示したモノを手に入れようとする。

『シンデレラ』『赤ずきん』『ジャックと豆の木』『ラプンツェル(髪長姫)』の4つの童話を、一つの物語に巧みに活かしたユニークなミュージカルで、歌(作詞と作曲スティーブン・ソンドハイム)も歌唱も素晴らしく、ホリディ・シーズンの公開にぴったりという作品だった。あらすじに書いたのは第一部で、第二部ではそれぞれに願いを果たした主人公たちの「その後」が描かれる。

トニー賞作品賞を受賞したブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、後半が本ミュージカルの真価だと思う。城の暮らしに疑問を持つシンデレラや、美しさを取り戻したが魔力を失った魔女の心境が、歌に託されて表現されていく。

しかし、映画化に当たっては後半のアイロニーが歌だけで表現され、物語的には簡略化されたために、旧来のディズニー的テイストになり、「めでたしめでたし」で終わる童話世界のその後の苦さを感じ取ることが出来なった。

反面映画館での上映では、後半になって子供たちが飽きて歩き廻るという状態。大人向けとしても子供向けとしても中途半端な作品に陥ってしまったように思う。原作を書いたジェイムズ・ラパインが本作の脚本も書いているが、改変に疑問が残った。

監督は『シカゴ』『NINE』のロブ・マーシャルで、会話が歌となり踊りとなっていくスムーズな変化の演出はさすがマーシャルと唸らせるものがあった。なるべく特撮を使わず、セットや実写を使った映像も美しい。

ミュージカル映画を観ていつも感心するのは、映画俳優たちの才能の豊かさで、ミュージカル舞台出身のケンドリックはさておいても、ストリープはむろんのことブラントやパインの歌唱力に驚かされた。ミュージカル映画を見る楽しみの一つは、映画館一杯に広がる伸び伸びとした歌声に身をまかせること。そう思うと、満足のいく映画体験だった。

上映時間:2時間4分。
"Into the Woods" 英語公式サイト:http://movies.disney.com/into-the-woods/?cmp=wdshe_omde_ITW_google_
『イントゥ・ザ・ウッズ』日本語公式サイト:http://www.disney.co.jp/movie/woods.html