"The Imitation Game"(邦題『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』)


イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』写真クレジット:The Weinstein Company 
1939年ドイツに宣戦布告した英国は、ドイツ軍の情報を傍受していたが、暗号機エニグマによって複雑に暗号化された情報は解読不能状態だった。そこで英国軍はブレッチリー・パークの政府暗号学校に、数学者アラン・チューリングベネディクト・カンバーバッチ)ら暗号解読の精鋭数人(マシュー・グード、アレン・リーチ)を集めて、極秘のプロジェクトを立ち上げる。
チューリングは天才肌で傲慢、エキセントリックな言動で仲間の中では孤立。軍上部からも誤解を受けて苦しい立場に置かれる。しかし、そんな彼の唯一理解者である女性学者ジョアン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)の助けを得て、暗号解読への道が開かれていく。

この時チューリングが考案した解読機がコンピューターの誕生に大きく貢献する。スマホ全盛の現在を思えば、人類の未来を決定した画期的な発明だった訳だが、英国政府が彼の偉業を讃えたのは2013年、彼の死後60年経ってから。それはなぜだったのか?

物語は暗号解読を巡ってスリリングに始まるが、描かれるのは学者チューリングの生涯。ずば抜けた頭脳を持ちながら学生時代は虐められ、エニグマ解読によって連合国軍に有益となる多くの情報を提供するも、その業績は極秘のまま、戦後はある罪を負わされる。時代は「ノーマル」では無かった彼に厳しく、戦後彼が受けた法の仕打ちが彼をさらに孤独の淵に追いやっていくのだ。

カンバーバッチがシャーロックとは違った天才像を巧みに演じ、歴史に埋もれた数学者の生涯を生き生きと蘇らせている。2014年を代表する秀作の一つで、アカデミー賞ではカンバーバッチの主演男優賞など8部門でノミネートされた。

監督はクライム映画『ヘッドハンター』をノルウェーで大ヒットさせたモルテン・ティルドゥム 。原作は英国の数学者アンドリュー・ホッジスによるもので、脚本は米国の若手グレアム・ムーア。彼はコンピューターが大好きだった子供時代からチューリングのファンだったという。

紅一点のクラークも実在した学者で、当時給料は男より少なく、女という理由で学業の向上を阻まれたと言っている。作中、そんな彼女がチューリングに「ノーマルでいたかったと思うかもしれないけど、世界はあなたがノーマルで無かったからこそ、よりよい場所になれたのよ」と元気付け、絶対負けない女性学者の気概をみせて小気味良かった。

上映時間:1時間54分。
"The Imitation Game" 英語公式サイト:http://theimitationgamemovie.com/
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』日本語公式サイト:http://imitationgame.gaga.ne.jp/