"McFarland, USA" (原題『マクファーランド』 )


映画紹介:Walt Disney Studios Motion Pictures
高校フットボールのコーチ、ジム・ホワイト(ケビン・コスナー)は、選手を厳しく叱ったせいで学校を去ることになり、加州マクファーランドの高校に転任してくる。マクファーランドはヒスパニック系住民が多数派の貧しい農業地域で、妻のシェリル(マリア・ベロ)と娘たちは失望を隠せ無かった。
ジムは体育の授業を教えながら、生徒達の早い走りっぷりに驚かされる。家族と共に農地で働く生徒たちは自転車を持つ余裕はなく、農地から学校まで走って通っていたのだ。ジムは彼らの走りの能力を生かすクロスカントリー競走部を立ち上げることを思いつく。
しかし、陸上など教えたことないジムと、生活の重荷を背負った生徒たちの前にはさまざまな問題が待ち受けていた。

白人コーチの努力で、ヒスパニック系の少年たちが自らへの自信と誇りを掴み取っていく。87年に加州のクロスカントリー競技で優勝した実在のマクファーランド高校チームの実話なので、文句のつけようがない良い話だった。

米ではしばしば製作される人気の高いジャンル、スポ根映画の枠にぴったりハマる体裁で、多くの場合は本作のように White savior narrative、「白人救済者が不遇の有色人種を助ける物語」として描かれる。

白人救済者ものは古くは『アラバマ物語』『アラビアのロレンス』に始まり、近年なら『デジャンゴ』『リンカーン』『それでも夜は明ける』など数多く枚挙に暇がない。中には『しあわせの隠れ場所』のように明らかに白人優位性と嘘くさい感動の押し付けを感じさせる作品もあるが、本作はその難を逃れている。

ニュージーランド出身の監督のニキ・カーロ(『クジラの島の少女』)は、ジムという白人救済者をどう描くかに細心の注意を向けたといい、それは作品にきちんと反映された。
ジムは名作『プライド 栄光への絆』のコーチ/父親像に近く、感情的で迷いも多く、娘思いのごく普通の家庭人。立派な檄を飛ばせるヒーロー・コーチでもなく、白人社会からはじき飛ばされた彼とその家族もまた、ヒスパニック・コミュニティに学び、救われていくのだ。コスナーとベロはそんな謙虚さのある生活人を地味に好演している。

後半、貧しいスター選手のトーマス(カルロス・プラッツ)が、ジムに向かって「給料の良い仕事を得て、大きな家に住むことがアメリカン・ドリームなのか?」と迫る場面がある。この問いかけは重く、本作の核心をなすもので、その答えの一つがエンディングで映し出される。
本作が感動的だった理由はチームの優勝にあったのではなく、物質至上のアメリカン・ドリームの追うのではない、ある生き方と価値観を提示していたから、と思えてならない。

上映時間:2時間9分。
"McFarland, USA" 英語公式サイト:http://movies.disney.com/mcfarland-usa