"Kingsman: The Secret Service"(原題『キングスマン ザ・シークレット・サービス』)


写真クレジット:20th Century Fox
長い伝統を持つ英国の秘密諜報組織「キングスマン」はある事件で仲間の一人を失い、ボスのアーサー(マイケル・ケイン)は、ベテランスパイ、ハリー・ハート(コリン・ファース )に新人スパイをリクルートするよう命じる。
ハリーはかつての仲間の息子で無目的な生活を送るエッグシー(タロン・エガートン)を見つけ出し、「キングスマン」としての指導を始め、エッグシーは何人か候補者と共に厳しいテストを受けることになる。同じ頃、米国のIT長者のバレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン )は、タダでネットや電話が使えるSIMカードをばら撒き始めた。彼の狙いは何なのか?ハリーは大富豪という触れ込みでバレンタインの豪邸を訪れる。

英国製のスパイ・アクションで、12年にマーク・ミラーデイブ・ギボンズが書いたコミック『The Secret Service』の映画化である。コメディ仕立てになっているが、オースティン・パワーズ風のパロディではなく、細部にしっかりと英国紳士の矜持とルール、身だしなみ等が描きこまれ、傘やライターを使ったアクションというレトロ感が堪らなく楽しい作品だ。

英国王のスピーチ』のファースが適役で、お洒落なスーツやタキシードに身を包み、スピーディなアクションをこなしている。この役のために6ヶ月も訓練をしたらしい。

キック・アス』でヒットを飛ばした監督マシュー・ボーンによると、「キングスマン」のイメージは007しかもS・コネリーではなく英国紳士の元祖D・ニーヴンだったという。

なるほどと思いつつ、筆者は大昔にTVで放映されたスタイリッシュな英国スバイ番組『アベンジャース』(現在上映中の映画とは無関係)や、黒縁メガネのスパイが登場する映画『国際諜報局』でケインが演じたハリー・パーマーを思い出し、数々の英国スパイ映画へのオマージュを感じた。

パーマーは下層階級なまり使う異色のスパイで、彼のイメージはコテコテ訛りで喋る母子家庭出身の若者エッグシーに投影されているのかもしれない。初主演のエガートンウェールズ出身)が敏捷な動きでエッグシーを好演。アクションに肉体感を持たせて、新しい英国スター誕生を予感させてくれた。

キングスマン」のマストである英国風ユーモアのある会話術が全編に散りばめられて楽しく、良く書けた脚本(ボーンとジェーン・ゴールドマン)だ。
ただハートのアクションの見せ場となる教会での死闘シーンはやり過ぎ。古いスパイ映画はアクションにも節度とスマートさがあった。その点も見習ってほしい気がするだが、そこまで期待するのはない物ねだりだろうか。

時間:2時間9分。日本では今夏に劇場公開の予定。
"Kingsman: The Secret Service" 英語公式サイト:http://www.kingsmanmovie.com/