“Aloha”(原題『アロハ』)


“Aloha”写真クレジット:Columbia Pictures
グレー感多い過去を持つ元パイロットのブランアン(ブラッドリー・クーパー)は、民間軍事会社を経営する富豪カーソン(ビル・マーレイ)が計画するロケット打ち上げを助けるためにオアフ島に戻ってきた。
空港ではお目付役として空軍パイロット、アリソン(エマ・ストーン)が彼を待ち受け、一方ブライアンの13年前に別れた元恋人トレイシー(レイチェル・マクアダムス)も、パイロットの夫(ジョン・クラシンスキ)の出迎えにきていた。
トレイシーの家でのディナーに誘われたブランアンは、アリソンを伴なって出かけ、トレイシーの結婚に影が差していること、そしてブランアンへの気持ちがまだ消えていないことを知る。

あの頃ペニー・レインと』『ザ・エージェント』などロマンティック・コメディを得意とするキャメロン・クロウ監督の最新作。というより、監督が1/4中国系のハワイアンという設定のアリソン役を白人のエマ・ストーンに配役したことを謝罪した映画として知られてしまった。

ハワイ州映画局長からはハリウッドのハワイに対するステレオタイプ映画と断じられ、ハワイ出身のジャーナリストや活動家からは、”Aloha”というハワイの人々にとって神聖な意味合いを持つ言葉を題名として使いながら、使用の了解も取らず、舞台はオアフの基地、登場人物はほぼ白人、という文化的鈍感さが指摘された。これには同感せざるを得ない。
日本の芸妓の映画『SAYURI』の主演が中国人で、英語で製作された時の「これはないだろう」感と重なってしまう。

しかも、文化的鈍感さに片目をつぶっても、出来の良い映画作品とは言い難かった。
本作は人気俳優クーパーのロマンスを盛り上げる背景としてだけハワイではなく、宇宙からの世界監視の野望を持つカーソンに対し、ハワイアンであることを自負し、ハワイの空を守りたいと願うアリソンを対峙させるもう一つの物語の舞台でもある。だからこそストーンの配役は致命的なミスで、その上このシリアスなサイドストリーと、メインのロマンティックなコメディとのギャップが大きすぎて物語が拡散し、まとまりに欠けてしまった。

前半で、ハワイ先住民によるハワイ独立主権を主張する指導者プウホヌア・バンピー・カナヘレが登場し、彼らが暮らす「プウホヌア・オ・ ワイマナロ・ビレッジ」の生活の一部が紹介されている。最もハワイらしさが伝わる貴重な場面と言えるが、ハリウッド映画という虚構の中に登場したせいか、彼らの王国の姿も活動も架空のものと誤解されるのではないかという危惧が残った。だが、自分自身を演じたカナヘレは肯定的で「本作を通じて自分たちの活動が伝われば」とコメント。本作中、彼は "Hawaiian by birth, American by force” と書かれたTシャツを着ている。

ちなみにヒロでの劇場上映はガラガラ、2週間で上映が終わってしまった。

上映時間: 1時間45分。
“Aloha”英語公式サイト:http://www.sonypictures.com/movies/aloha/