"The Martian"(邦題『オデッセイ』)


『オデッセイ』写真クレジット:20th Century Fox
火星探査隊の一員マーク・ワトニー(マット・デイモン)は、猛烈な砂嵐に遭遇、彼だけが吹き飛ばされる。隊長メリッサ・ルイス(ジェシカ・チャステイン)は、彼の生死の確認が出来ないまま、宇宙船に危険が迫っていたため火星を離れ、地球への帰途につく。
知らせを受けたNASA長官テディ・サンダース(ジェフ・ダニエルズ)は、マークの死亡を公表したが、数日後マークの生存が確信される。しかし、通信は断たれ、火星に残されたマークは一人でサバイバルに立ち向かっていく。

火星を舞台にしたロビンソン・クルーソーもので、宇宙に取り越される設定は近年のトレンドだ。漆黒の虚空を一人行く『ゼロ・グラビティ』や、宇宙物理学を意欲的に取り入れた『インターステラー』でも描かれているが、本作は『キャスト・アウェイ』に近い作品だ。

植物学者であるマークが、火星の土を集めて芋作りに成功していく様子など、逆境の中で前向きに少しづつ問題を解決していく様子が生き生きと描かれ、デイモンが適役。

また、マークの生存を知った宇宙船の隊長や隊員(ケイト・マーラマイケル・ペーニャ等)の驚きと困惑や、マークを救出しようとするNASA側(クリステン・ウィグショーン・ビーン等)の努力も同時に描かれ、物語が立体的に語られていく。

マークが孤独の中で聞くディスコ・ミュージックが軽快で、作品に楽天性を生み出し、公開週末の興行成績一位、5,500万ドルを稼ぎ出す大ヒット作となった。

監督は英国出身、米で活躍する名匠リドリー・スコット。『ブレードランナー』『エイリアン』などのSF大作に代表作が多く、映像に凝る彼らしい美しく雄大な作品で、ヨルダンのワディ・ラムを火星に見立てた映像が圧倒的な素晴らしさだ。

原作はアンディ・ウィアーがウェブで無料で連載していた小説『火星の人』、脚本は『ワールド・ウォー Z』のドリュー・ゴダード。科学的正確性を高めるためNASAの惑星科学部門責任者もサポートをしている。

後半はマークの帰還に向け、多くの障害を乗り越え、ベストを尽くす有能な学者、技術者、宇宙飛行士らの懸命な姿に焦点が当てられる。彼らが一丸となる背景には、たった一人の命も疎かにしない人間性と宇宙科学の進歩への揺るぎない信頼が感じられた。そのポジティブさは実にアメリカ的ではあるが、娯楽映画として満足度は高く、誰にでも推薦できる作品だ。

上映時間:2時間21分。全米のシネコン等で上映中。日本は来年2月に公開予定。
写真クレジット:20th Century Fox


『The Martian』英語語公式サイト:http://www.foxmovies.com/movies/the-martian
『オデッセイ』日本語公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/odyssey/