"The Revenant"(邦題『レヴェナント: 蘇えりし者』)


『レヴェナント: 蘇えりし者』写真クレジット:20th Century Fox
1823年、極寒のルイジアナの原野で、準軍隊率いるハンターらが罠猟中に、先住民の襲撃を受けた。隊員は半減、生存者の一人、息子を連れて参加していたベテラン・ハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、食料を探して森に入り、クマの急襲を受け瀕死の重傷を負う。
隊長(ドーナル・グリーソン)は二人の隊員、ジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディ)とジム・ブリッジャー(ウィル・ポールター)にグラスの死を見届けるように指示。ところがジョンはまだ息のあるヒューを置き去りする。

題名の通り重傷を負ったグラスが長い道のりをいかにして生還し、ジョンらへの復讐を果たしたか、という物語だ。導入部を除けばシンプルなストーリーで台詞も少なく、果てしなく続く雪の原野を背景に、グラスの過酷なサバイバルの道程を壮大なスケールで見せていく。

自然光だけで録ったエマニュエル・ルベツキの映像の美しさとディカプリオやハーディらの熱演、坂本龍一の静謐な音楽など、どれも高い完成度で、映像しか描けない世界を見事に再現している。

また特撮を極力排除し、ほとんどを原野で録ったという冬の撮影現場の厳しさや激しさなどがスクリーンからビンビンと伝わり、苦闘の末に完成にこぎつけたコッポラ監督の『地獄の黙示録』を彷彿とさせるものがあった。

監督は去年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞監督賞などを主要4賞を受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。本作も10部門でノミネートされ、作品賞は逃したが監督賞を2年連続で、ルベツキディも去年に続いて撮影賞、カプリオも初の主演男優賞を獲得した。

グラスは実在の人物でジョンやジムも実在する。米国では開拓史の武勇談として長く語り継がれ、多くの小説や映画になっている。本作の原作はマイケル・パンクの『蘇った亡霊:ある復讐の物語』で、イニャリトゥ監督とマーク・L・スミスが脚本を書き、新解釈を加えた。
実在しないグラスと先住民の女性との間に生まれた息子ホーク(フォレスト・グッドラック)が加えられたのだ。彼の存在を通して先住民の悲劇的体験と彼らの伝統的文化が描かれることになり、本作の太いバックボーンになっている。

語り尽くされた英雄譚から血塗られた開拓史を俯瞰する、その意欲的な姿勢こそが本作を傑作と呼ぶに相応しい作品に押し上げている。

上映時間:2時間36分。全米のシネコン等で上映中。日本では4月22日から劇場公開予定。

"The Revenant"英語公式サイト:http://www.foxmovies.com/movies/the-revenant
『レヴェナント: 蘇えりし者』日本語公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/revenant/