"Spotlight"(邦題『スポットライト 世紀のスクープ』)


スポットライト 世紀のスクープ』写真クレジット:Open Road Films
ボストン・グローブ紙には、事件を独自に調査して報じるスポットライトというセクションがある。2001年、デスクのウォルター・ロビンソン(マイケル・キートン )は、新任編集長マーティ・バーロン(リーブ・シュレイバー)から、小さな記事だったカトリック教会で起きた子供への性的虐待事件を捜査をするよう指示される。
ウォルターは編集長の指示をチームに伝え、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)、マイケル(マーク・ラファロ)、マット(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)の3人は直ちに事件を調べ始め、驚くべき事実に行き当たるのだった。

新聞報道としてピュリツアー賞を受賞した捜査報道を扱い、記者たちの名前もすべて実名という社会派ドラマの力作だ。

彼らの調査で浮かび上がったのは、ボストンだけで87人の神父が何百人もの子供たちへの性的虐待をした事実。にも関わらず、教会は長年に見て見ぬ振りを続けた。
教会はどのように隠蔽を続けたのか、誰が関わったのか、記者たちはいかにして隠蔽の事実を掴んでいったのか。その経緯を緻密に追っていくスリリングな作品でもあるが、焦点は粘り強く地道な調査を続けた記者たちの真摯な姿と、彼らを支えたボストン・グローブ紙の果たした役割である。

ニュースを朝刊や夕刊を読んで知る時代は終わり、今やネットで読んで知る時代。ニュースの速報性が先行し、読者は次から次へと報道される様々な事件を瞬く間に忘れていく。報道の役割とはそれだけなのか? 

政府や大企業、教会など強大な力を持つ組織の犯罪行為はどこかで握り潰され、事件は司法の穴をすり抜けていく。誰がその隠蔽を暴いていくのか。
報道機関の果たすべき役割について再確認させてくれる優れた映画作品で、映画ファンならウォーターゲート事件を扱った名作『大統領の陰謀』を思い出すだろう。

監督は『扉をたたく人』のトム・マッカーシー、俳優としても多くの映画作品に出演している。オリジナル脚本は彼とTV番組『ザ・ホワイトハウス』の脚本を手がけたジョシュ・シンガー。よく整理された脚本で、演出もすっきりとして混乱がなく見応えのある作品に仕上がっている。

今年のアカデミー賞作品賞を受賞、助演賞にノミネートされたマクアダムスとラファロだけでなく、キートンらベテラン俳優らの抑えた演技も大きな見どころだ。

上映時間:2時間9分。全米の劇場で公開中。日本では4月15日から劇場公開予定。

"Spotlight" 英語公式サイト:http://spotlightthefilm.com/
スポットライト 世紀のスクープ』日本語公式サイト:http://spotlight-scoop.com/