『The Jungle Book』(邦題『ジャングル・ブック』)


ジャングル・ブック』写真クレジット:Walt Disney Studios Motion Pictures
インドのジャングルで黒豹のバギーラ(声:ベン・キングズレー)に拾われ、狼の一族に育てられたモーグリ(ネール・セティ)は優しい母や兄弟と共に元気な暮らしを送っていた。ところが、ある日ベンガル虎のシア・カーン(声:イドリス・エルバ)が現れ、人間の子供であるモーグリへの敵意をむき出しにする。
危険を感じたバギーラはモーグリを人の村に返そうと旅に出るが、追ってきたシア・カーンに襲われ、モーグリは一人ジャングルに取り残されてしまう。

67年のアニメと98年の実写版をへて3度目のディズニーによる実写版の映画化。劇場公開5日間で1億ドルを売り上げた大ヒット作で、監督は「アイアンマン」シリーズのジョン・ファヴロー。彼ならではのアクションが大きな見どころで、牧歌的だったアニメ作とはまったく違うスピーディなアクション満載、加えて声の出演にビル・マーレイスカーレット・ヨハンソンクリストファー・ウォーケンを配して、大ヒットも納得の娯楽大作である。

背景から動物まですべてCGで作られたという本作、ブルースクリーンの前で実演をしているのはセティ少年だけ。インドへも行かず、生きた動物も一切登場しない、かなり自然とはかけ離れた『ジャングル・ブック』を見ていて、67年のアニメを懐かしく思い出してしまった。奇妙なことだが、アニメの方が「人と自然」の手触りがあるように感じられたのだ。

CG技術はどんどん進化し、鮮明で美しい映像を生み出し、驚異的ですらあるのだが、本作のように映像のほぼすべてがCGという作品を長時間みていると、かすかに人工的な冷たさのようなものを感じてしまう。その感覚は本作だけに言えることではないのだが、ジャングルも動物もリアルであればあるほど自然から離れていく感じがしてならなった。

原作は1894年に英国の作家ラドヤード・キップリングが書いた短編小説で、その一編である狼に育てられた少年の話を下地にしている。キップリングが子供時代を過ごしたインドを舞台に、彼が現地の使用人から聞かされたジャングルや動物たちの不思議な物語など思い出しつつ『ジャングル・ブック』は書かれたのではないだろうか。
黒豹や狼が人の子を見守り育て、愉快な熊も登場する実に良く出来た物語は読者の想像力をかりたて、何度も映画化されてきたのも当然と改めて感心した。

原作の中心に自然への回帰、生き物の共生を信じる動物たちへの愛があり、それが『ジャングル・ブック』が長年読み継がれている理由と言えるかもしれない。ちなみにワーナーブラザースが18年公開に向けた『ジャングル・ブック』を製作中だ。

上映時間:1時間45分。日本では8月11日から劇場公開予定。

"The Jungle Book" 英語公式サイト:http://movies.disney.com/the-jungle-book-2016
ジャングル・ブック』日本語公式サイト:http://www.disney.co.jp/movie/junglebook.html