“Ghostbusters” (邦題『ゴーストスターズ』)


『ゴーストスターズ』写真クレジット:Sony Pictures
コロンビア大で素粒子物理学を教えるエリン・ギルバート(クリステン・ウィグ)は、かつて幽霊を科学的に証明する本をアビー・イェーツ(メリッサ・マッカーシー)と執筆したが、誰からも相手にされなかった。
学者としては幽霊研究のことを隠したいエリンだったが、大学に本の存在がバレて失職。アビーを訪れると、今でも彼女はエンジニアのジリアン・ホルツマン(ケイト・マッキノン)と共に研究を続けており、エリンも自分の信じる研究に進む決意をする。そんな頃、ニューヨークでは奇怪なる幽霊事件が頻発し始めていた。

84年に公開され大ヒットした同名映画の第3作、リブート作品だ。女性科学者やエンジニアが大まじめに幽霊現象を追い、幽霊捕獲装置を発明し、戦う姿を描くアクション・コメディ。しかも女4人が登場して、恋愛や家族、おしゃれやセックスを語らず、世間から無視されても、たすら幽霊退治という設定は女性像としてかなりユニークで、特筆したい。

監督はウィグとマッカーシーが活躍してヒットした『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のポール・フェイグ。脚本は『デンジャラス・バディ』のケイティ・ディポルドとの共同。難しい女だけのコメディを成功させてきた二人だ。

本作でもウィグがメインで、マッカーシーがサポート役だったが、これが成功したとは言えなかった。派手なアクション映画なので、スケールの大きなマッカーシーをメインに据えた方が効果的だったのではないか。女たち同士の掛け合いが軽妙で、楽しかったのだが、どこか爆発的に笑える要素に欠けていて、残念でならなかった。

そんな作品そのものへの評価とは無関係に、本作は公開前から不評が多かった。
男性4人が主演したオリジナルのファンが女性だけのリブートへの不満を炎上させ、YouTubeの予告編についたDislikeの数が過去最多。公開後は4人目のゴーストスターズを演じたレスリー・ジョーンズの容貌や人種を卑しめる悪意のツイートが集中、ジョーンズがツイッターを辞めるという事態まで起き、潜んでいた米国の性や人種への差別の存在を浮きぼりにしたのだ。

このような事態は、移民やイスラム教とへの差別を臆面もなく口にしたD. トランプが大統領候補になるというヘイトの時代、その時代の空気から生まれたのだろう。この空気は川崎市で「ヘイトスピーチ・デモ」する一群とも繋がる。くしくもヘイトというゴーストを引き出す結果となった本作、今の時代を映し出した意味深い作品と言えるだろう。

上映時間:1時間45分。日本は全国のシネコンで3D、2D両バージョンで上映中。
“Ghostbusters”英語公式サイト:http://www.ghostbusters.com/
『ゴーストスターズ』日本語公式サイト:http://www.ghostbusters.jp/