“Jason Bourne”(邦題『ジェイソン・ボーン』)


ジェイソン・ボーン』写真クレジット:Universal Pictures
ブラックブライアー計画の暴露から9年後、ジェイソン・ボーンマット・デイモン)は世間から身を隠し、格闘技賭博で稼ぐような暮らしをしていた。そんな彼のもとの元CIAのニッキー(ジュリア・スタイルズ)が現れ、CIAのメインフレームをハックして入手した彼の経歴に関する秘密情報があると伝える。
彼女のハッキングを知ったCIAのサイバー部門エージェント、リー(アリシア・ヴィキャンデル)は二人の居場所を突き止め、リーのボスであるCIA長官(トミー・リー・ジョーンズ)は、現地にアセット・暗殺者(ヴィンセント・カッセル)を送り込む。

絶大な人気を持つスパイ・スリラー『ボーン』シリーズの4作目、正確にはボーンが登場しない前作を入れて5作目に当たる。首を長くして待っていたファンも多かったと思うが、長い首はあっと言う間に肩に食い込んでしまったのではないだろうか。『ボーン』シリーズは3作目『ボーン・アルティメイタム』で終わっていたのだ。

CIAが秘密裏に暗殺部門を立ち上げ、その第1号として暗殺者となったボーンが、記憶を失い、記憶を取り戻す中でCIA内部の黒い陰謀と計画の実態に迫っていく、というシリーズ。3作を通して徐々に暴かれる陰謀と主人公の自己発見の物語は、個人と組織の対決を描いた第一級のスパイ映画だった。キレよく見事に完結した3部作の後だけに、今回設定された謎と陰謀には、安直感と蛇足感が拭えなかった。ロバート・ラドラムの原作小説も3作で完結している。

それでも前2作を監督したポール・グリーングラスによるアクション演出はさすが。反政府デモで騒然とするギリシャの街でバイクでの逃走や、盛大なベガスでのカーアクションなどはシリーズらしい精彩を放っていた。

またデイモンも中年になった孤独な元暗殺者を好演。だが彼の巧さが物語の平板さの中で浮いてしまい、うっすらと嘘くさく感じられてしまったのはファンとしては辛かった。

人気シリーズだけに、豪華キャストで柳の下にもう一匹のドジョウを狙ったのかもしれないが、寝た子は起こすべきではなかった。ボーンのその後など知りたく無かった、という思いを強くした。

上映時間:2時間3分。日本では全国で上映中。
“Jason Bourne”英語公式サイト:http://www.jasonbournemovie.com/
ジェイソン・ボーン』日本語公式サイト:http://bourne.jp/