"The Light Between Oceans"(原題『ザ・ライト・ビトゥイーン・オーシャンズ』)


写真クレジット:Touchstone Pictures

第一大戦後のオーストラリア、過酷な戦火を生き延びた退役兵トム(マイケル・ファスベンダー)は、溌剌とした若い妻イサベル(アリシア・ヴィキャンデル)と共に孤島の灯台守りをしていた。幸せな二人だったが、イサベルは二度目の流産を体験し、塞ぎ込んいた。
そんな頃、漂流中の小舟の中に、男の遺体と元気な赤ん坊を見つける。イサベルはこの子を自分の子として育てたいと言い張り、漂流船の報告をしなければならないトムは反対するが、妻の懇願を聞き入れ、二人は赤ん坊を我が子として育てていく。

M・L・ステッドマン原作のベストセラー小説(邦題『海を照らす光』)の映画化で、脚本/監督は『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス。夫婦愛や宿命の家族などをテーマに、畝るような感情体験を描くストーリーテリングを得意とする監督で、本作もそんな彼らしい作品の一つだ。ニュージーランドやオーストラリアの各地で撮影された雄大な海の景観を背景に、紆余曲折する夫婦のドラマが描かれていく。

ヴィキャンデルは本年のアカデミー賞助演女優賞受賞、欧州の女優としては今一番主演作が多く、撮影当時彼女と交際していたファスベンダーも演技賞ノミネートの常連。人気実力ともに波に乗るの二人による夫婦愛の物語という注目度もある作品。加えて、灯台のある孤島の絶景や、ポート・チャーマーズで再現された愛らしい町並みなど、ロケーションも大きな見どころになっている。

物語は中盤から、赤ん坊の生みの母ハンナ(レイチェル・ワイズ)が登場して、トムらの行動への疑惑が持ち上がり、遺体を巡る事件捜査へと大きく動き出す。

なぜ、赤ん坊はハンナの夫と漂流していたのか、なぜトムはイサベルの懇願に屈し、事件の責任を負う決意をしたのか、この悲劇の背景には大戦の影があり、たぶんそれが小説の読みごたえとヒットに繋がったのではないだろうか。

だが、本作では大戦の悲劇が霞んで、ハンナとイサベルそれぞれの子への執着と、二人の間で良心の呵責に苦しむトムのドラマに焦点が置かれ、感傷性が際立つ嫌いがあった。そのためか、イサベルがわがままな女にしか見えず、その後を描いたエンディングも見せる必要があったのか、疑問が残る。

ある夫婦を通した深い人間のドラマを期待したが、遠くに飛ばしたつもりのボールがポトリと手前に落ちた失望感が拭えなかった。

上映時間:2時間13分。

"The Light Between Oceans" 英語公式トレイラー:https://www.youtube.com/watch?v=w51IR_BFGyc
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