"Nacho Libre"

写真クレジット:Paramount Picture

メキシコを舞台に、孤児院で育った修道院の料理人ナッチョ・リブレが、レスラーになる夢を果たし、貧しい孤児院を救おうというお話。
彼は、試合に勝ってお金をもうけ、孤児たちにおいしいものを食べさせたいし、転任してきた美人の尼さんの気も引きたい。オオカミ少年みたいな若者を引き入れ、二人で田舎町のタッグマッチに出演を始めるが、負けてばかり。一度は勝ちたいナッチョは、苦肉の策を講じるが…。
子供向けに作られた映画なので、笑いが分かりやすく、ムチャクチャなレスリング・シーンなど大爆笑できる。だが、良く出来たコメディ映画とは言えない。
怪演で知られる人気コメディアン、ジャック・ブラックと、インディ系のおたく映画 "Napoleon Dynamite"を大ヒットさせた新進監督(ジャレッド・ヘス)が組んだ作品。脚本もブラックの出世作 "The School of Rock" の脚本家たちが書いた。この足し算なら成功マチガイ無し、という計算だろうが、相性がいま一息だった。ヘス監督独特の笑いのテンポと、ブラックの怪人的なパワーがかみ合わない。修道院世界の絶妙なおかしみと、レスリング世界の爆笑のブレが大き過ぎ、大揺れの船に乗っているような感覚だ。
"Napoleon ..." の成功は、主演俳優のオタクな風貌と、周囲からズレまくる脱力的おかしみにあった。難しいさじ加減の間と笑いを、うまく描き出した監督だと思うが、反鋭角的肉体美を惜しみなく披露(?)する強烈なブラックを、演出し切れなかったのだろう。残念だ。
メキシコが舞台なので、ユカタン的素朴な風貌の男たちや、愛らしい少年、超のつく美女、奇妙奇天烈なレスラーなど、未見のラテン系俳優たちが脇を固め、観ているだけで楽しい。しかし、こういう映画を、メキシコの観客はどう思うだろう。主人公はアメリカ人で、台詞もすべて英語だ。子供向け映画なので、この "Memoir of Geisha" 的アメリ中華思想は気になった。
出演は他に、エクトル・ヒメネスアナ・デ・ラ・レゲラ。上映時間:1時間31分。主要シアターで上映中。