"Out of Sight"

追う者と追われる者の恋のコメディ

『ER』でおなじみのジョージ・クルーニーと、ラテン系シンガーの実話『Selena』でその演技力を高く評価されたジェニファー・ロペスが主演のスリリングなラブコメディ。

連邦保安官のカレン(ロペス)は刑務所の前で偶然、脱獄しようとする銀行強盗常習犯のジョー・フォーリー(クルーニー)とその仲間に出食わしてしまう。彼らを捕えようとするカレンだが逆に彼女が捕まり、そしてまた彼女が逃げだしのドサクサの中で、なぜかカレンとジョーは互いに一目惚れ。追う者と追われる者の間に芽生えた恋の行方をメインに、超過保護のカレンの父親やらまぬけな強盗仲間などの脇役が巧みにからんで奇妙な追跡劇が展開する。サイドでジョーの鮮やかな銀行強盗ぶりからは一転のムショ暮し、「社会復帰」の挫折などアウトローの悲哀がさり気なく描かれ、作品に厚みを出している。

カレン役のロペスがいい。ラテン系独特の甘いゴージャスな顔立ちに、立派な体格。タイトスカートにハイヒールをはいてショットガンを構えたところなんてホント、カッコイー。ラテン系の女の俳優というとスペイン語アクセントの超まき舌でまくし立てるか、お色気が売り物なんてステレオタイプがあるけれど、ロペスはそのどれにも当てはまらない新しいタイプの俳優だ。

すっごく賢いのに情熱的、魅力的な笑顔にシャープなアクションのアンバランスもいい。アクション派の先輩デミー ”GIジェーン” ムーアよりずっと好感が持てた。またこの作品はクルーニーのファンにもオススメ。銀行強盗なのに、「オレ、女とダチにゃ弱いんだよ」とつい甘さが出てしまう「いい男」ぶりは『ER』通りの役どころだ。脇役もマイケル・キートンアルバート・ブルックス、サミュエル. L.ジャクソンなどクセ者ぞろい。

よく練られたおかしな台詞の掛け合いや、悪玉同士のだまし合いが、快傑作の『ゲット・ショーティ』(同じプロデューサー)を思い出させるが、作品としてはやや小ぶりな感じか。それでも十分楽しめるちょっと苦めの大人のコメディだ。監督は『セックスと嘘とビデオテープ』のスティーブン・ソーダーバーグ。