"Little Miss Sunshine"


写真クレジット:Fox Searchlight Pictures

コカイン中毒で養老ホームから追い出された毒舌家の老父(アラン・アーキン)、男子学生との恋に破れて自殺未遂をはかったプルースト学者の弟("The 40-Year-Old Virgin"のスティーブ・キャレル)、時代遅れの自己啓発システムに固執する夫(グレッグ・キニア)、会話拒否9ヶ月目で、ニーチェ愛読者の15才の息子、そしてミスコンに夢中の7才の娘、そんな彼らを支えるシェリル。この一家が、娘の出場する"Little Miss Sunshine"コンテストに向け、オンボロ・ミニバンで旅に出るロードムービー

強烈なエゴと問題を抱えた家族が旅行をすれば、ケンカとトラブルはつきもの。次々に起きる事件をトントンと見せて、笑わせてくれる。今年のサンダンス映画祭で観客賞などを受賞した、この夏注目のインディ系コメディだ。

シェリルの先導で男達が目指すのがミスコンというのがおかしく、異様に大人びた少女たちに混じって、勝ち目のなさそうな娘がけなげに踊る姿に、男達もついつい我を忘れて…という展開が微笑ましい。

やや、不満だったのは娘/姉/妻/母の4役をこなすシェリルの役どころ。一家に一人いるだけでも大迷惑な男が4人もいるのに、彼女だけは平常の人。たまにキレることはあっても、男達の苦しみを理解し、応援する物わかりの良い女性という設定だ。演技派のトニ・コレットが巧みに演じているが、役柄が平坦過ぎてもったいない。

男が中心になるコメディは、このパターンが多い。女は家族思いの母/妻/恋人という役回り。もちろん、エゴの塊のような母や妻が登場するコメディもあるが、どこか悲劇的だ。コカイン中毒の老母とか、自殺未遂した同性愛者の妹には、気軽に笑い飛ばせないものがある。女のエゴもトラブルも、男同様に愚かで滑稽なはずなのに、女を思いきり笑える映画が少ないのはなぜだろう。
監督はジョナサン・デイトンとバレリー・ファリスの夫婦。上映時間:1時間42分。SFは、8月4日からAMC Metreon, Stonestown Twinで上映開始。