”The Prestige”


写真クレジット:Touchstone Pictures

先に公開された秀作 ”The Illusionist" とはまったく違う、2人の天才的奇術師のライバル関係をスリリングに描いた作品で、奇術師映画豊作の秋という感じだ。
舞台は19世紀末のロンドン。当時、奇術師は時代の花形、かつて友人同士だった華麗なパフォーマーのルパート・エンジャ(ヒュー・ジャックマン)と研究熱心な奇術の虫アルフレッド・ボーデン(クリスチャン・ベイル)は、ある事件以来、たがいのタネを暴きあう敵対関係にあった。ある時エンジャは、舞台のボーデンが消え、一瞬で別の場所に現れる「瞬間移動」の奇術を観て瞠目。トリックの秘密を知ろうと助手の女をボーデンのもとに送り込み、それを機に「瞬間移動」をめぐる2人の攻防はエスカレートしていく。
監督は、"Batman Begins"をヒットさせたクリストファー・ノーラン。知的迷走感溢れる傑作 "Memento" で注目を浴びた人で、原作を書いた弟のジョナサンがこの映画の脚本も書いている。
奇術師がたがいをだまし合う話なので、さまざまなトリックが仕組まれている。それを時間を前後に移動させながら見せて行く複雑な作りだが、奇術に命をかけた2人の男の確執に焦点を置いているために、「瞬間移動」の謎解き自体は難しくはない。面白いのは、その確執のドラマに「瞬間移動」のアイディアを使い、物語自体を奇術のように見せている点だ。
後半になって実在の発明家ニコラ・テスラが登場すると、SFファンタジー風に物語がふくらんで飽きさせない。華やかなジャックマンとストイックなベイルの好対照が適役。エンジャの助手にスカーレット・ヨハンセン、トリック作りの技師にマイケル・ケイン、意外な役でデヴィッド・ボウイも顔を出し、娯楽映画に徹して成功している。
原作は英国のクリストファー・プリーストの同名小説(邦題『奇術師』)。96年に世界幻想文学大賞を受賞した。原作の方はさらに複雑な構成で、面白そうだ。
上映時間:約2時間15分。10月20日より上映中。