著者エリック・シュローサー氏に聞く


写真クレジット:Fox Searchlight Pictures, RPC Coyote, Inc.
時々、むやみに食べたくなるファーストフード(以下FF)のハンバーガー。なぜあんなに安いのだろう? 
サルモネラ菌がよく見つかる不衛生なバーガーの背景を追ったルポルタージュに"Fast Food Nation" (2001年出版。邦題『ファーストフードが世界を食いつくす』http://www.amazon.co.jp/gp/product/479421071X/sr=11-1/qid=1163689212/ref=sr_11_1/503-1994926-7745567)がある。

私たちの食生活を大きく変えたFF業界の成り立ちと生産の現状、社会/文化に与えた多大な影響を徹底的に調査取材した。大手出版社から敬遠され、小出版社から出してベストセラーになった。

映画は架空のバーガー"Big One"の生産、経営、販売に関わる人々を描いた群像劇で、ブルース・ウィリスなど作品意図に賛同した俳優たちが無償で多数出演している。
出版以来映画化を考えていたと言う著者のエリック・シュローサー氏。『アトランティック・マンスリー』などに寄稿する気鋭のジャーナリストだ。本の内容を理解し、リアルな実情を描ける監督捜しに腐心(ふしん)した。「米国資本と繋がりの深いハリウッドのシステムとは無縁な人がなかなかいなくてね。(事実を歪められる)不安があって映画権を売れなかった」と言う。

04年に英国のベテラン・プロデューサー、ジェレミー・トーマス(『ラストエンペラー』)と、その後リチャード・リンクレイター監督( 『スクール・オブ・ロック』)と出会った。
「ジェレミーは実に誠実で、資金を全部ヨーロッパで集めてくれた。リックもFF業界のことを良く理解していた。全面的に信頼して、映画作りを任せる気持ちになれた。映画は監督のものだからね」
ドキュメンタリーにこだわることで、かえって正確な事実が伝わらないことを怖れ、データや多様な人々の証言で構成された原作を、監督と二人でフィクションとして書き下ろした。
落とせなかったポイントは…
「過酷な労働と生活状態を強いられている移民労働者の現実だ。FF産業のあり方を通して、この国がどのように成り立っているかを伝えたかった。タイトルは "USA" にしようかと思ったほどだ」と力を込める。
精肉加工現場で働くメキシコから来た不法移民の人々を中心に物語が進み、若い姉妹が劣悪な労働条件に加え、上司との性関係を強いられる状況が描かれる。最後、牛の内臓をかき出す部門に送られた女性主人公の悲痛な表情が忘れられない。
「彼女たちは(食肉とセックスの)ミートマーケットに送られているんだ」と言ったシュローサー氏の言葉が胸を衝いた。

出演は他にパトリシア・アークエットイーサン・ホークグレッグ・キニアなど。上映時間:1時間46分。サンフラシスコは17日よりAMCメトレオン、バンネス14などで上映開始。