"Blood Diamond"


写真クレジット:Warner Bros. Pictures

タイトルのブラッド・ダイヤモンドとは、紛争ダイヤモンドとも呼ばれる。アフリカの紛争地で武器弾薬購入の資金となっている密輸ダイヤモンドのこと。この映画の舞台となるシエラレオネ共和国は、アフリカでも有数のダイヤモンド産出国で、1991年にほう起した反政府軍がダイヤモンドを財源として武装し、長い内戦状態が続いた。その当時を背景に、ダイヤによって人生を歪められた肌の色の違うアフリカの男たちを描いたのがこの映画だ。

主人公は、反政府軍のダイヤ採掘場で強制労働をさせられていた漁師のソロモン(ジャイモン・フンスー)と、ジンバブエ生れの元傭兵でダイヤの密輸人をしているダニー(レオナルド・ディカプリオ)。離散した家族を捜すために採掘場から逃走したソロモンは、巨大なピンクダイヤの原石を見つけてどこかに埋めていた。それを知ったダニーは、家族が再会するためにダイヤが必要、戦闘経験がある自分と組まないかと持ちかける。ダイヤを手に入れアフリカ脱出を企むダニーと、息子を反政府軍に奪われたソロモンは手を結び、激しい戦火の下、ダイヤを埋めた場所へ決死の旅に出かける。

アフリカを舞台にした英米の映画はここ数年の間に数多く公開され、『ホテル・ルワンダ』などのアフリカの男を主人公としたものに秀作が多い。
この作品も世界ーダイヤを消費する米国人として、アフリカ各国の長い内戦を支えてきたという苦い認識から作られたようだが、2時間以上ある映画の半分近くが激しい戦闘アクションの連続。そのためか、主人公たちの人間的苦しみが伝わってこない。特にダイヤの黒い構造を暴こうとする米国の女性ジャーナリスト(ジェニファー・コネリー)が、知的で正義感の強い優等生的女性像にはまり過ぎて現実感がなかった。彼女が早口で紛争ダイヤの問題点を語る部分も説明的で、物語として問題点を提示しきれなかった脚本の不備を露呈している。
紛争ダイヤの血塗られた背景を扱った功績はあると思うが、作り手の良心的な意図は伝わらず、アフリカの苦境に乗じてスリリングなアクション映画を作っただけ、という印象。涙もろい私だが、エンディングで涙を流す主人公をみても、なにも心に響くものがなかった。
監督は『ラスト・サムライ』のエドワード・ズウィック。上映時間:2時間18分。各地シネコンで上映中。