"The Astronaut Farmer"


写真クレジット:Warner Bro. Picture

宇宙ロケットを農場の納屋で組み立てた農夫とその家族の物語。15才の息子がロケットを地上から管制し、妻と娘たちに応援され、父親が宇宙へ旅立つまでを軽快なユーモアにつつんで描くファミリードラマだ。

父親を演じたのはいつもはひねった役どころが多いビリー・ボブ・ソーントン。"The Bad News Bears" や"Bad Santa" で子供との共演の多い彼だが、この作品では突飛な夢をもった優しい父親を好演している。

監督/製作/脚本はマイケル、マーク・ポーリッシュ兄弟の2人。"Twin Falls Idaho"という双子のデリケートな感性を描いた作品を脚本/監督/主演でデビューして以来、ややエキセントリックな男を主人公とした映画を兄弟で作り続けている。
「ほぼ思い通りの作品を作れた」という監督たちとソーントンの3人から映画撮影の背景などについて話を聞いた。

自分の育った家族をそのまま描いたという監督のマイケル。少年がロケットをコントロールする怖れを乗り越えるくだりについて「自分たちは父親から、やりたいことをしてはいけないとか、無理だとか言われたことがなかった。彼はなんでも自分でやってみせてくれてから、さあやってみろと言うんだ。だから、何をするにも怖いと思うことがなかったな。親に恐怖がなければ、子供も怖れないものさ」というマーク。

作品中、父親が幼い娘たちをコックピットに乗せたり、ロケットの仕組みを丁寧に教えるシーンが何度も出てくる。強引に自分の夢を押し付ける父親とは違って、夢を持つ大切さを教え、その実現のプロセスを子供と共に歩もうとする愛情豊かな父親像だ。娘役は監督兄弟の実の娘たちが演じた。

「子供というのはどの俳優よりも一番カンの良い俳優。自然にまかせておけば、自然な反応をするので実は楽なんだよ」というソーントン。彼が現場でも父親役となってシーンをリードし、場面の設定だけであとは子供たちをそのまま撮影。家族的な温かみが画面からも伝わる。

子供の時から宇宙飛行士が憧れだったというソーントンは、脚本が気に入って出演を決めた。
「主人公は小さな町では変人扱い、自分も似たようなものなんだ。僕も小さな田舎町に生まれ、大きな夢をもって町から出てきたからね。今は映画界で幸運に恵まれていると思うし、映画作りが大好きだけど、ハリウッド・システムは苦手なんだ。パーティにも行かないし、いつも家にいる。そんなところもこの主人公に似ているかもしれないな」と役つくりについて気軽に語ってくれた。

聞く者をリラックスさせる語り口に引込まれつつ、これが大スターの持つ華やかさとカリスマ性かと納得する取材だった。

他の出演はヴァージニア・マドセンブルース・ダーンブルース・ウィルスなど。
上映時間:1時間45分。2月23日からベイエリア各地のシネコン等で上映開始中。