"The Host"


写真クレジット:Magnolia Pictures

文句なしに面白い映画を観て来た。去年、韓国で公開され、過去最高の観客動員数を記録した怪物パニック映画だ。

ソウルの隅田川(?)漢江(ハンガン)に突如、巨大なサカナ怪物<グエムル>が現れ、河岸で出店を営む一家の中学生の娘を連れ去ってしまう。この娘を助け出そうと怪物を追いかける家族4人の活躍を描く。

“King Kong”と“The Incredibles”を合わせたような話だが、イタダキの安っぽさはなく、韓国の近代史と米国との関係、風俗、反権力意識をディテールに盛り込み、笑いあり、涙あり、サスペンスありの盛りだくさんな娯楽大作だ。

イカやビールを出店で売っている温厚な祖父(ピョン・ヒボン)とその店を手伝う怠け者の父親(ソン・ガンホ)、アーチェリーの選手である若い叔母(ペ・ドゥナ)と、かつて学生運動をしていた血気盛んな叔父(パク・ヘイル)。この4人にとって連れ去れらた利発な娘ヒョンソ(コ・アソン)は家族の要。携帯から届いたヒョンソの「助けて」の声を頼りに救出に向かう。

政府は、グエムルは正体不明のウイルスの元凶、触れた者は死に至ると発表してソウルの街を封鎖。戒厳令下のようなソウルを舞台に、怪物を追いつつ、ウイルス感染者として警察に追われる一家が、怒鳴り合い、助け合いながら、怪物と果敢に闘うという設定がずば抜けている。

また、この怪物がユニーク。エイリアンのようにおぞましく、アンコウみたいにぶ厚い唇をしたグエムルが、ネソネソと河岸を暴れまくる姿がなんとも滑稽なのだ。壊すものも売店や小さな車など庶民的なものばかりなので、日常生活にヌーっと現れた怪物に不気味なリアリティがあり、笑いながら怖いという独特な味わいだ。

怪物追跡にくたびれた一家が出店に座り込んで、カップ麺を食べるアジア的おかしみ。アーチェリー名手である叔母への期待を何度も外しながら、危機一発を切り抜ける意表をつく演出の連続。ハリウッド映画では絶対あり得ない結末も卓越し、韓国映画の勢いが感じられた。

すでに公開済みの日本ではヒットしなかったという話を聞いて、この作品の家族愛の熱さが伝わらない日本の寒さを思った。監督は韓国のスピルバーグと呼ばれる36歳のポン・ジュノ

上映時間:2時間。3月9日から上映開始。