"The Namesake"


写真クレジット:Fox Searchlight Pictures
02年の『モンスーン・ウェディング』で、数々の映画賞を受賞したミーラー・ナイール監督の最新作"The Namesake"が明日から公開される。

米国に移民したインド人一家の二世代の物語。ベンガル出身の父からゴーゴリという奇妙な名を付けられた息子が成長して、その名を棄てる。その後、結婚、離婚の変転をへて、命名した父の思いを知っていくまでを描いていく。

華やかな作風で知られる他のナイール作品とはやや趣きを変え、40年にわたる家族の変遷を淡々と追いながら、年をへて知る親の愛の大きさを描き出して静かな感動を呼ぶ。インド系に限らず移民としてこの国に暮す人々には特に共感の持てる作品ではないかと思う。

原作(邦題『その名にちなんで』)はジュンパ・ラヒリ。99年のデビュー作『停電の夜に』でピューリッツア賞などを受賞して注目を浴びた若いインド系の女性作家だ。03年に出版されたこの長編でヘミングウェイ賞などを受賞している。
息子が中心の原作を「彼と両親の関係が面白いので、沈黙と静止が多い親の世代と、動き変化する息子の世代という二つを交互するように描いた」というナイール監督。カルカッタとニューヨークを舞台に、19才でインドから留学生として当地に来た監督自身の体験を全編にちりばめた。

「私の両親は、あまり幸せな夫婦では無かったので、この映画の両親像は私にとって理想の親の姿です。息子のゴーゴリは私の一五歳になる息子そのまま。短気なので、早口の私の話さえ半分も聞かないところなんかそっくりよ。でも、彼は祖父母が好きで、インド文化にとても興味があるので主人公とはちょっと違いますね。移民の子供はえてして自分の文化背景を奪われてしまいますから」と母親らしい表情を見せる。

ゴーゴリを演じたカル・ペンについて「息子がどうしても彼にと懇願したもので」と冗談を交える。ペンは"Harold and Kumar Go to White Castle" など若者向けの軽いコメディに出ているインド系俳優。「オーディションがとても良かったので彼にしました。でも、"Harold …"を観ていたら彼を選んだかどうか」と笑わせる。

脇役の多かったペンだが、この作品では少年から青年までの成長と心理変化を丁寧に好演している。

独立系の映画作りが一番自分には向いていると言うナイール監督は、コロンビア大学で映画を教える教授でもある。美しいインドの服装に映画監督、教授、母という多忙な役割をふわりと包む。その華やかな微笑から知的なインド女性の静かな自信が伝わってきた。

上映時間:2’時間2分。サンフランシスコは、3月9日よりエンバカデロ・シアターで上映開始。