"Hot Fuzz"


写真クレジット:Rogue Pictures (Focus)

英国で公開され、大ヒットを続けているアクション・コメディだ。豆腐の中に熱々の石を突っ込んだような設定に、ウッソーと声を上げる荒唐無稽(こうとうむけい)な展開。そのバカバカしさを百も承知で爆笑させてくれるコメディの王道をいく映画だ。早いコマ割りで進んでいくので、一見荒っぽい作りに見えるが、登場人物や場面のディテールにおかしさがギッシリとつまって、何度観ても楽しめそう。ちなみにFuzzとは警官の俗称とのこと。

ロンドン警視庁の巡査ニコラス・エンジェル(サイモン・ペッグ)は、検挙率が他と比べて4倍もある超優秀な警官の鏡。あまりに光って目立ち過ぎるので、ケムたい上司たちは彼を左遷。着任先は犯罪など起きたことがないというのどかな田舎町で、警察署では警官たちが朝からケーキを食べてダーラダラ。署長の息子ダニー(ニック・フロスト)と組まされ、逃げた白鳥を探すなどの仕事にクサりまくるニコラスだ。ところがある日、不審な事故が起きて殺人ではないかと勢い込むが、署内の誰もが事故だと言って取り合わない。しかし、事故は連続し、平和な町の正体が明らかになっていく…。

クールでハードコアなニコラスと、米国の刑事映画が大好きな太っちょのダニーのミスマッチで笑わせるが、後半二人の友情が深まり物語がさらに面白くなっていく。二人組刑事が活躍する"Point Break"などの映画からのパクリシーンを何度も使う臆面のなさや、脇を固める元007のティモシー・ダルトンやジム・ブロードベンド、ビル・ナイティなど英国の名優たち豪華な顔ぶれなどで、映画ファンをおおいに楽しませてくれる。

モンティ・パイソンの毒気はないが、反エスタブリッシュメントの伝統を感じさせる英国らしいナンセンス・コメディの秀作と言える。
監督はこれが長編二作目のエドガー・ライト監督、弱冠32才だ。ヒットした前作のゾンビ・コメディ"Shaun of the Dead"以来、脚本は主演のペッグと共同執筆。これからが楽しみな監督だ。

上映時間:2時間1分。サンフランシスコは4月20日から上映開始。