"Sunshine"


写真クレジット:Fox Searchlight Pictures

太陽が死にかけ、人類が滅亡の危機に直面、という前提で語られるイギリスのSF映画

このジャンルの映画は製作費が莫大なので、このところアメリカ映画の独壇場。『アルマゲドン』みたいな騒がしいものが多かったが、この作品では『2001年宇宙の旅』の古典的な静謐感に、『エイリアン』のスリル、『U-ボート』の窒息感を加えるという試みがなされ、意欲的だ。

監督は『28日後…』で切れの良い演出を見せたダニー・ボイル監督。前作の危機状況を引き継ぎ、宇宙に広げた感のある作品でもある。

2057年、世界各国から集められた8人のクルーを乗せた宇宙船イカロス2号が、太陽に向かう。太陽を再生させるため、マンハッタン島の大きさの原子爆弾を太陽に打ち込もうという計画だ。

順調な航行中、7年前に消息を断ったイカロス1号から通信を受信、大議論の末に1号の救助に向かうことする。が、それがきっかけとなって事故や事件が相次ぎ、クルーたちは太陽を目前にして最大の危機に直面していく。

人類の存亡がかかっているため、クルーたちの責任感は強く、危機のたびに次々と犠牲者が出る。それを歌い上げ系のBGMを流しつつ大げさに賛美するのがハリウッド。だが、この作品ではその演出に節度があり、切迫する任務の遂行という物語の中心を見失うことがない。国際色あるキャストもよく選ばれていた。

静かな存在感でクルーを率いる船長に真田広之、食料と酸素を確保する生物学者ミシェル・ヨー、精巧な爆破装置を操作する物理学者にキリアン・マーフィ、という顔ぶれ。大スターより地味な俳優たちを配したことで、任務に殉じていくクルーたちのリアリティが出た気がする。

この映画用に作られた太陽の映像が圧倒的な美しさ。素粒子物理学者の協力を得てデザインされた宇宙船もユニークなキノコ型で、始めは全体像が見えないのだが、物語の進展とともに船体の全貌が理解できる仕掛け。後半はボイル監督らしいスリリングなアクションが連続するなど、見どころの多い作品だ。

難点は『2001年…』をお手本にしながら、命の源である太陽を神とみたてた前任クルーの思いが描き切れていないため、深遠なテーマを提出しきれなかったこと。これは惜しかった。

上映時間:1時間48分。7月20日より上映中。

日本語公式サイト:http://movies.foxjapan.com/sunshine2057/