"Arctic Tale"


写真クレジット:Paramount Classics
ロサンゼルスに住む友達が、レクサスの新車カタログを見ていたら「ママ、どうして低燃費車にしないの?」と娘に問いつめられ、プリウスを買ったと言う。今や環境問題に一番敏感なのは未来をになう子供たち。当然だろう。


PRニュースワイヤーの最近の調べによると、中学生の60%近くが脅威と感じる事柄に、地球温暖化と自然災害をあげている。同じ調査で、テロリズムの脅威に高い関心を示した成人と対象的。子供たちの方に平常心があり、消費文化にしがみつく大人たちの嘘をジッーと見ている気がする。

北極に生息する動くぬいぐるみシロクマの子供ナヌーと、セイウチの子供シーラの成長の姿を、激変する自然環境との闘いを通して描いていくドキュメンタリー映画だ。姉妹で子を育てるセイウチのユニークな生態など、五年以上かけて撮影した動物たちの姿を、ドラマチックな物語として構成したナショナル・ジオグラフィック社初の長編映画でもある。

北極の氷は10年ごとに8.5%づつ消滅しており、2040年までにすべて消滅という報告がある。氷の上で生活し、氷を割って獲物を取るシロクマにとってこの現象はまさに生存の危機。獲物の取れない母から見放され、幼くして一人立ちしたナヌーの生存の闘いが始まる。夏が長くなり、氷のない海に取り残されたナヌーは、空腹を抱えて何週間も泳ぎ続けるしかなかった…。

シロクマが子を生む瞬間をとらえた貴重な映像や、氷の下をしなやかに泳ぐ巨漢セイウチの目を見張る映像など、極寒の中で撮影をした作り手の熱意が伝わる。監督はアダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソンのカップルで、北極生活十年の間に三人の子が生まれ、イヌイットの家族に預けて撮影を続けたという。

映画作品としては、子供が楽しめるように作り過ぎたせいか、"March of the Penguins" のような感動には及ばなかったが、夏の暑い日、小さな子供を連れて映画に行くなら断然おすすめ。

氷に囲まれた北極の景観に涼みつつ、温暖化の脅威を子供に教えるつもりが、自分が再度教えられてしまうはずだ。大海原を必死で泳ぐシロクマの姿をしかと心に刻んで、子供たちと温暖化防止の足なみをそろえようではないか。

ナレーションはクイーン・ラティファ
上映時間:1時間24分。8月3日よりベイエリアで上映開始。

日本語公式サイト:http://www.nanu.jp/