"3:10 To Yuma"


写真クレジット:Lionsgate
久々の西部劇、しかも上出来だ。ならず者対家族の信頼を失いかけた父という設定に、いくつものヒネリが入り、最後まで画面から目が離せなかった。

極悪な強盗団の首領ボブ・ウィード(ラッセル・クロウ)が捕り、農場主ダン・エバンス(クリスチャン・ベール)は、金と引き換えに彼の護送役を引き受ける。行き先は列車の駅。数日後の3時10分発のユマ行き列車に乗せ、裁判を受けさせるためだ。

早撃ちで知られるウィードは頭脳明晰なカリスマ的ワルで、仲間の信望も篤い。彼らはウィードを奪還すべく護送団を狙っている。

そんな危険な護送だが、妻と子を抱え、借金を負うエバンズに退路は無かった。何人もの命知らずが雇われ、護送の旅は始まる。しかし、護送人たちはウィードや彼の仲間に次々殺され、駅を目前としてエバンスと彼の14才の息子、鉄道関係者の三人だけになる。

圧倒的な劣勢、ウィードはその気になれば素手エバンズたちを殺せる力がありながら、仲間が彼らをジリジリと囲い込む様子を楽しんでいる。この時、金のためにここまで来たエバンズの中に大きな変化が起きる。そしてウィードも、意外な行動に出た…。

魅力的なワルと貧しい父という対象的な男の心理的駆け引きの面白さに加え、法をはさんで正反対の立場にいる男たちの変化していく内面と友情を描いて、満足度充分。エンディングも泣かせながら、オーッと思わせる。

57年にグレン・フォード主演で作られた同名映画『決断の3時10分』のリメイク。前作を西部劇の傑作にあげる人も多く、未見なので比較は出来ないが、前作に泥を塗ってはいないだろう。

原作者は "Get Shorty" や "Out of Sight" など映画化される小説が多いエルモア・レナード。男っぷりの良いクールなワルを描かせると、彼の右に出るものはいない感じだ。

この作品でもクロウが最適役、余裕たっぷりにアウトローを演じている。ベールも家族のために生きる男の熱情を巧みに表現して引けをとらず、男性が観ると双方に共感が持てる西部劇ではないかと思う。

監督は"Walk the Line"のジェームス・マンゴールド。出演は他にピーター・フォンダベン・フォスターなど。

上映時間:1時間57分。各地のシネコン等で上映中。

英語公式サイト:http://www.310toyumathefilm.com/