"The Assassination of Jesse James by The Coward Robert Ford"
写真クレジット:Warner Bros. Pictures
題名同様に長い映画だ。2時間40分と聞いてメゲル人もいるだろう。その上、ペースはスローロースト、登場人物も観客の理解や分析を拒絶する変わり者ぞろい。
心理描写にも距離感があり、望遠鏡で遠い過去を覗くようなもどかしさすらある。だが、それらの特徴がこの作品にいわく言いがたい詩的なムードを与えている。それを面白いと感じるか、退屈と感じるかによって評価は大きく分かれるだろう。
物語は題名の通り。19世紀に生きた実在のアウトロー、ジェシー・ジェイムズ (ブラッド・ピット)が、強盗団の若い手下ロバート・フォード(ケイシー・アフレック)に殺される話だ。
アメリカ人なら誰もが知っている話なので、見せ所はいかにその過程を見せるか。映像スタイルや細部に熱意が込められ異色作と言える。
ジェシーは名うての列車強盗。何人もの人を殺していたが、ロックスターのような西部のヒーローでもあった。彼に憧れて強盗団の一味に加わったロバートは、いつか自分もジェシーのようになりたいと強く願う。そして、機会はすぐにやってくる。
当時、ジェシーの首には大金の賞金が掛けられており、あっけなく逮捕されたロバートは、役人からジェシーの首を取れとそそのかされるのだ。
一方、賞金のことを知ったジェシーは、彼を売ろうとした仲間を捜し出しては、始末していた。そして、ジェシーがついにロバートの前に現れ、不可解な行動に出た…。
謎だらけの男ジェシーの静かな狂気と、功名心にかられた奇妙な若者ロバートの対比の妙。暗殺後のロバートの転身の異様さ、粗末な屋外の厠で男を誘惑する女など、女も男も荒くれている。
そんなワイルドウエストの荒涼たる風景の中に、アメリカの原風景が浮かぶ。
エンディングもケネディ暗殺事件を想起させ、象徴的だった。
主演俳優たちの好演、映像の美しさも特筆したい。監督はニュージーランドのアンドリュー・ドミニク。
出演は他にサム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー、サム・ロックウェルなど。
サンフランシスコは、5日よりブリッジ・シアターで上映中。