“Jimmy Carter Man from Plains”


“Jimmy Carter Man from Plains”写真クレジット:Sony Pictures Classics

カーター元大統領は、今朝もモーニングショーに出ていた。イラン核開発疑惑に対して米軍がイラン爆撃なんて、キナ臭い噂が流れているからだ。彼は「爆撃は絶対に避け、平和的解決の道を探るべき」と断固として発言していた。

カーター氏といえば、イスラエルとエジプト間の和平協定、キャンプデービッド合意を締結させた大統領。振り返ってみると77年から81年までの任期中、人権外交、中東和平のために尽力した。

退任後も精力的に和平活動を続け、02年にはその業績に対してノーベル平和賞が与えられた。その彼が去年、"Palestine: Peace Not Apartheid" という挑発的なタイトルの本を出版。大反響を呼んだ。

イスラエルが 、パレスチナ自治区内にイスラエル入植者を守るための高いを塀を迷路のように作って、パレスチナ人を分断隔離した政策の非人道性を指摘したもの。一部の知識人などからごうごうたる非難を浴びたが、「真実を語ってくれた勇気に感謝」という読者の声も大きく、ベストセラーになった。

このドキュメンタリー映画は、その本のブックツアーをするカーター氏を追っている。監督は、『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミー(写真右)。意外な感じがするが、長年、彼を尊敬していたという。

カーター氏が現在も暮すジョージア州の小さな村プレーンズでの、バーベキュー・パーティで寛ぐ姿に始まり、東海岸各都市の本屋でにこやかにサイン会をし、ラジオやテレビで激論を交わし、メディアの取材を受け、大学で講演をし、という目まぐるしい活動をする姿に密着している。

驚いたのは彼のスタミナ。ツアーの合間に、ハリケーン・カタリーナの被害者のために家を建て、カーター・センターの業務をし、執筆をし、という過密スケジュールを淡々とこなし、82才とは思えない。映画は、そんな彼を支えている篤い信仰心についても触れていく。

今でも寝る前に妻と共に聖書を読む習慣は欠かさないというカーター氏。彼の政治理念の基礎に、キリスト教徒として平和を求める責務があるという明快な信念があった。同じキリスト教でも恐怖を煽る福音派ブッシュ大統領とは大変な違い。

カーター氏がいる限り中東の和平も夢ではない、という気にもさせられる。人としての生き方も真正で清々しく、背筋が伸びる思いだった。

上映時間:2時間6分。11月2日からルミエール・シアターで上映開始。

“Jimmy Carter Man from Plains”公式サイト:http://www.sonyclassics.com/jimmycartermanfromplains/