"Atonement"


"Atonement"写真クレジット:Focus Features

先日、 久しぶりにピンクレディの写真を見て、彼女たちが意外にもふっくらしていたので驚いた。活躍していた頃は、痩せていると思っていたのに、30年も経た今見ると健康的。自分の感覚の変化にもう一度驚いた。


英国でベストセラーになったイアン・マキューアンの小説(邦題『贖罪』)を原作とした文学的な香りのするこの映画を観ながら、思ったことも似たようなこと。キーラ・ナイトレイ、痩せ過ぎだ。

女優の体型を云々するのは同性として恥ずべきことだが、気になって物語に入り込めなかったのだから、仕方がない。が、ともかく紹介を試みよう。

1930年代、英国の裕福な家庭で育った対照的な姉妹が主人公。妹ブライオンは作家志望の13才、気位の高い姉セシリア(ナイトレイ)は使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と密かな恋をしている。ところが、ロビーはある事件のえん罪を被り、逮捕される。ブライオンが彼を犯人と証言したのだ。

時は過ぎ、戦渦(せんか)に翻弄されながらも再会を熱望するロビーとセシリア。同じ頃、成長したブライオンは自分の証言の間違いに気づき、犯した過ちの大きさに打ちのめされるのだった。

いくつかのシナリオでセシリアとロビーの恋のてん末が描かれていく。その複雑な構造に少し戸惑うが、最後になって、この物語が後年作家となった初老のブライオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)の回想と創作として語られたことが明らかになる。

はたしてセシリアとロビーは再会できたのか。
ブライオンの過ちに秘められた思いは…、という謎を含んだ正統派の英国映画らしい作品だ。

ぐっと入り込んで楽しみたかったのだが、ナイトレイが出てくると脱線。痩せる体質なのかもしれないが、薄手のドレスを着た姿などドレスがハンガーにぶら下がっているようで、痛々しさが先立ってしまう。こんな状態を「美しい」という記号で見せない配慮が欲しかった。

痩せれば痩せるほど「美しい」という刷り込みを続けると、感覚が麻痺して、それが真実になってしまう。あと30年も経つと、このナイトレイがふっくらして見えるようになるのだろうか。そんな世界で女はみな不機嫌なはずだ。

監督は”Pride and Prejudice”のジョー・ライト

上映時間:2時間3分。サンフランシスコは7日よりクレイ・シアターで上映開始。
"Atonement"英語公式サイト(英国):http://www.atonementthemovie.co.uk/site/site.html